【ブラウブリッツ秋田】なぜクラブライセンス不交付の可能性?『特例』期限を迎えるも、「基本計画の策定」すら怠る

「特例措置の妥当性にも疑義」「経緯および現状を踏まえて、J1およびJ2クラブライセンスについては不交付と判断される可能性」

J2リーグ・ブラウブリッツ秋田の岩瀨浩介社長が6月30日、「2024シーズンJ1クラブライセンス申請」について記者会見を行い、その内容がクラブ公式サイトにも公開された。

秋田はソユースタジアムでの2024シーズンのJ1クラブライセンス取得に向けた申請を行ったが、リーグから「J1およびJ2クラブライセンス」の不交付もあり得ると説明を受けたという。

老朽化した施設の補修・改善などによって対応しているスタジアムが全国的に多いなか、日本サッカー協会とJリーグは「理想的な球技場」の全国での実現を優先課題としてきた。一方、クラブライセンス制度によって、上位で結果を残したクラブであっても、昇格の「権利(ライセンス)」さえ与えられなかったケースもこれまで散見されてきた。

そこで、2018年、スタジアムに関する一つの「例外規定」として、「Jリーグが掲げる理想的なスタジアムを整備するのであれば、5年の猶予を認め、上位ライセンス取得可能」と記された。さらに「着工しており3年以内に完成可能であれば、上位ライセンス取得可能」との“合わせ技”も可能に。また「想定外の事象が発生し、やむを得ないと認められる場合は理事会にて例外規定の適用の有無を決定する」との一文もある。

今回、秋田はJ1クラブライセンス発行から「5年間」が経ちながら、計画がどのような状況になっているのか報告を怠っていたことになる。

Jリーグからの通達は次のような内容だったという。

「5年が経過している現時点においても、新スタジアム整備に関する基本計画すら策定されておらず、実現が不透明であると言わざるを得ない状況です。2018年度の特例措置の妥当性にも疑義が生じており、遡って過去のクラブライセンスを取り消すことはないものの、今後のクラブライセンス判定においては、これまでの経緯および現状を踏まえて、J1およびJ2クラブライセンスについては不交付と判断される可能性があります」

もちろん、この間にはコロナ禍もあり、サッカーを取り巻く環境も大きく変わった。ただ、そうした状況などを踏まえたうえでも、「基本計画すら策定されておらず、実現が不透明」と、現時点の計画など報告がなかったため、リーグから厳しい指摘を受けている。

秋田によると、これを受けて6月28日、「秋田市からは経費面でも支援を行いたい旨、また令和8年(2026)度には工事着手できるよう取り組むとの表明をいただきました。また、秋田県からは秋田市と共に早期の実現に向け積極的に取り組むこと、また民間主導で整備されるスタジアムであっても経費面での支援を行う考えを表明いただきました」と、「意向証明」を得たということだ。

さらに「予定では新スタジアムの着工が2026年になっていますが、できる限り1年でも半年でも早められるよう、クラブとして県・市と協議しながら、スピード感をもって進めていきたいと思っている所存です」。加えて、「県も市も表明書に記載していただいている通り、費用面での一定の負担はしていただけるとのことや、場所は既に外旭川地区という形で決まっているので、規模さえ固まればスキームには落とし込みやすいと捉えています」ということだが、今後、具体的に秋田県・秋田市の議会の承認を得られるかどうかもポイントになってくるだろう。

J1クラブライセンスが、そのままAFCライセンスに該当するようになった。2023-24シーズン、ヴァンフォーレ甲府がACLの出場権を得たが、地元での開催ができず、国立競技場をホームとすることを決めたのは記憶に新しい。

もちろん、ドメスティックで十分ならば、J2クラブライセンスを選択すればいい。ただ今回の秋田のように、特に地方クラブでは「実はその地元クラブが世界と直結している」ことが、なかなか自治体(あるいはクラブ内でも)まで認識されていない場合が多い。今後はアジアの大会もヨーロッパにちなみ三層方式( チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ、カンファレンスリーグのように)で開催される。

ホストとして、突然、海外クラブを迎え入れる機会があり得る。その際、果たして現在のスタジアムでいいのか。

国体対応のスタジアム老朽化に伴い、全国でこうした「スタジアム問題」は起きている。そもそもサッカースタジアムは「国際基準にしていこう」というのが、JFAとJリーグの基本スタンスでもある。

吉田謙監督とともに秋田はパッショナブルなサッカーを実現してきた。その秋田に「魅力的なスタジアム」ができればどんな効果が起きるのか。実は国際的な関係を築く突破口の「入口」にもなり得る。サッカー(Jリーグ)にとどまらない可能性が広がっている。

吉田監督は本気で「秋田のために」戦っている。より高いステージを目指している選手・監督やサポーターのためにも、クラブフロントには各関係機関との丁寧な対応や折衝が求められる。

© SAKANOWA株式会社