琉球王国時代の正統家譜、戦火逃れ寄贈 志良堂家の子孫が那覇市歴史博物館に

 琉球王国時代の那覇の士族(サムレー)、志良堂家の家系に関する記録「新参密姓家譜 正統」が6月30日、子孫から那覇市歴史博物館に寄贈された。沖縄戦で多くの琉球王国時代の史料が焼失した中、戦火をくぐり抜けて子孫が大事に保管していた。同博物館は「琉球王国時代の史料が限られる中で、家譜に書かれた内容は当時を知る上で大変貴重」としている。

 志良堂家は、志良堂親雲(ぺー)上清房(ちんせいぼう)(1640年生まれ)が1世。父はトカラ列島中之島出身で薩摩藩那覇在番奉行の随行で琉球に来た日高六右衛門、母は波上宮の内侍だった真寿で、同博物館によると当時、薩摩出身者が琉球の女性と婚姻関係になるのは珍しいという。志良堂家は代々、那覇の泉崎に住んでいたが「琉球処分」を機に、今帰仁村や本部町などに移った。

 正統の家譜は1世から8世まで記されている。今帰仁村の日高修さん(80)が家譜を受け継ぎ、大事に保管。その一族で那覇市在の日高清義さん(74)、秀雄さん(70)兄弟が修さんから受託し今回寄贈した。家譜は正統のほか、支流が4冊あり、うち1冊はブラジルで見つかり、今年5月に県立図書館に寄贈された。

 家譜は首里王府の士族にのみ所持を許可され、身分を証明する公文書のようなものだった。同博物館は家譜の原本を約30冊、複製を千冊余(重複含む)所蔵している。伊集守道主任学芸員は今回の寄贈に「状態も良く、虫食いもない。ご子孫が大事にされてきたことがよく分かる」と話した。

 上原清実博物館長は「ご子孫が大事にされてきたものをぜひ多くの皆さんにも見てもらいたい」と話した。同館では来年以降、家譜の展示を予定している。 (座波幸代)

© 株式会社琉球新報社