宇宙の起源「素粒子が鍵」 ノーベル物理学賞受賞者 梶田氏、茨城・東海で講演

素粒子ニュートリノの質量や宇宙について講演した梶田隆章氏=東海村船場

2015年のノーベル物理学賞受賞者で日本学術会議会長の梶田隆章氏(64)=東京大卓越教授=が1日、茨城県東海村船場の東海文化センターで講演した。発見に関わった素粒子ニュートリノの質量や性質を紹介し、「今後も素粒子の世界や宇宙を理解する重要な鍵となる」として、宇宙の起源解明に挑む最先端の研究について分かりやすく解説した。

講演はJ-PARCセンターや東海村などが主催。住民や子どもたちにJ-PARC(大強度陽子加速器施設)や基礎科学研究への関心を高めてもらう狙いで企画された。梶田氏のほか、高エネルギー加速器研究機構の坂下健准教授らも講演。同村の小中学生や県内外の親子連れなど348人が来場した。

梶田氏は、岐阜県飛騨市の地下千メートルにある観測装置スーパーカミオカンデで、地球の大気で生じる「大気ニュートリノ」を観測し、ニュートリノに質量があることを発見した。

梶田氏は講演で、目に見えず物質をすり抜ける性質を持つニュートリノについて、まれに原子核に衝突した際に出る光を観測する方法があると紹介。スーパーカミオカンデや人工的にニュートリノを生み出せる同村のJ-PARCがこうした観測実験を行える装置だとし、存在意義を強調した。

138億年前の「ビッグバン」によって発生した大量の粒子(物質)と反粒子(反物質)が相互に消し合う中で、わずかに残った粒子が宇宙を作ったと考えられていることを丁寧に説明。この仮説を立証する鍵がニュートリノにあるとし、基礎科学研究の価値をアピールした。

講演後に梶田氏は、子どもたちに対し「基礎科学にはほかにも面白い大切なテーマがある。基礎科学に興味を持ってもらえたなら、積極的に飛び込んでほしい」とメッセージを送った。

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