五味太郎さんの絵本 心ゆくまで 赤磐・澄川さん 自宅に私設図書館

 赤磐市仁堀西の山あいに、絵本作家五味太郎さんの作品を集めた私設の図書館がある。ファンの澄川順子さん(69)が昨春、自宅に開設した。五味さん側に届け出たところ“サプライズ”で本人から80冊もの絵本が届いたといい「自然に囲まれた静かな環境で、遊び心あふれる作品の魅力に触れ、五味さんの温かさも感じてほしい」と呼びかける。

 図書館は澄川さん方の離れ(木造平屋約30平方メートル)に開館。専用の本棚を設け、絵本を中心にカレンダー、時計、すごろくといった関連グッズも含め約400点を展示している。絵本は代表作「きんぎょがにげた」「みんなうんち」のほか、岡山ゆかりの昔話を題材にユーモラスに描いた「ももたろう」、旅のエッセー「履きごこちのよい靴」などをそろえる。「きんぎょがにげた」「かくしたのだあれ」は外国語版も用意した。

 澄川さんは約40年前、子どもの読み聞かせ用にと五味さんの絵本を手にした。「言葉遊びを交えた文が楽しく、登場するキャラクターも表情豊かでかわいらしい。子どもだけでなく自分自身も心が和んだ」と家族でファンになったという。

 2021年、倉敷市で開かれた五味さんの原画展を鑑賞。作品の魅力に浸るうちに、子どもたちがゆっくりと絵本を読める場をつくりたいと思い付いた。

 家族の協力を得て絵本を買い集め準備する中、五味さんの広報担当者に図書館開設を申し出て、所蔵する本を伝えた。するとしばらくして五味さん本人から手紙と絵本が届いた。手紙には、所蔵リストに入っていない本を選んだと書いてあり、澄川さんは「突然たくさんの本が届き驚いた。五味さん本人から認められたことが本当にうれしい」と振り返る。

 オープン後は新型コロナウイルス禍もあり、訪れるのは口コミで知った近所の家族連れが中心という。

 利用は電子メールで予約(gomitarolibrary@gmail.com)が必要。無料。作品の貸し出しは行わず、部屋を約2時間貸し切りにする。澄川さんは「世代を超えて愛されている五味さんの作品を心ゆくまで堪能してほしい」と話す。

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