カプセル玩具 第4次ブーム到来 県内でも専門店次々 近場の娯楽に

カプセル玩具の販売機がずらりと並ぶ光景は、まるで迷路のよう=ガチャガチャの森

 「ガチャガチャ」の愛称で親しまれているカプセル玩具。米国発祥で1965年に日本にもたらされてから半世紀以上たった今、「第4次」ブームが到来しているという。岡山県内でも専門店の出店が相次ぎ、景品も食品などを模したミニチュアから面白グッズまで多種多様だ。専門店を訪ね、人気の理由を探った。

 イオンモール岡山(岡山市北区下石井)で2020年にオープンした「ガチャガチャの森」。6月中旬に訪れると、平日にもかかわらず女性客でにぎわっていた。3、4段に積まれた約560台の販売機が並ぶ光景は圧巻。桃太郎の服を着た猫のフィギュアやタコの足付きの耳栓など、多彩な玩具に思わず目移りしてしまう。備前市出身の会社員(26)=神戸市西区=は「一番のお目当てではなかったが、好きなキャラクターの景品が出てうれしい。ハンドルを回す感触やワクワク感が好き」と目を輝かせた。

 運営するルルアーク(福岡市)の担当者によると、20年以降に全国で出店が急増し、19年度末の28店舗から約3倍の83店舗(フランチャイズ含む、6月13日現在)に成長。「白を基調としたシンプルな内装にするなど、大人の女性にも入りやすい空間づくりにこだわっている」と説明する。

 JR岡山駅地下の岡山一番街(岡山市北区駅元町)では「gashacoco(ガシャココ)」が6月に新店を開いた。近くには昨年オープンの姉妹店もあり、2店舗で計650台の販売機を備える。店舗関係者によると、駅を利用する生徒や学生、外国人観光客が目立つという。

 国内有数の品ぞろえを誇る「夢コロ」(同今保)には1500台超の販売機がずらり。備前焼の小物もあった。今年で開店20周年、運営するドリームハウス(同所)の長谷部元美社長は「以前は大人がガチャガチャをするのは抵抗感があるとの声も聞かれたが、幅広い世代で認知が進み、今では当たり前」と振り返る。

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 背景には、新型コロナウイルス感染拡大の影響もみられる。

 「コロナ禍で撤退した商業施設内の空き店舗に、電気代や人件費が抑えられるカプセル玩具専門店が出店する傾向が全国的に見られた。外出自粛で旅行ができない中、近場で楽しめるエンタメとして受け入れられたのでは」。日本ガチャガチャ協会(東京)の小野尾勝彦代表理事は説明する。

 小野尾さんによると、現在のブームをけん引するのは主に大人の女性。利用しやすい雰囲気の専門店が増えた上、食品を模した指輪など、女性を意識した商品がSNS(交流サイト)で話題を呼んだ。大人気となった漫画「鬼滅の刃(やいば)」の関連商品も売れ、好調を後押ししたという。

 日本玩具協会(東京)の統計ではカプセル玩具の市場規模は近年300億円台で推移していたが、21年度には02年度の統計開始以来、初めて400億円を超えた。さらに22年度は前年度比35.6%増の610億円だった。小野尾さんは「空港やJR駅構内への設置も増え、インバウンド(訪日客)人気もある。まだまだ伸びしろがある」とみる。

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 過去の流行を振り返ると、「第1次」ブームは人気漫画「キン肉マン」の消しゴム(通称・キン消し)が大ヒットした1980年代。当時は子どもがターゲットだったが、「第2次」が訪れた90年代にはフルカラーで高品質なフィギュアが登場し、大人にまで広がった。「第3次」はOL人形「コップのフチ子」が話題になった2012年。SNSに玩具の写真を上げる女性が増えた。

 価格も「第1次」の頃は1回100円だったが、現在は300~400円が主流。「その分、玩具の質が上がり、種類も豊富になった。現在は毎月300シリーズの新商品が発売され、再販しないものも多い」と業界関係者は言う。“一期一会”を楽しみながら、お気に入りを探してみては。

カプセルには備前焼や方言の書かれたストラップ、マスカットのミニチュアなど、多彩な玩具が入っている

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