脳科学者も驚愕するAIの進化…日本の教育現場に「Chat GPT」は必要か?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜7:00~)。「激論サミット」のコーナーでは、“Chat GPTが教育に必要か”について議論しました。

◆脳科学者もビックリの「Chat GPT」

「インターネット以来の大発明」とも言われ、話題となっている「Chat GPT」。3月14日に最新モデルが発表され、質問に回答するAIの学術知識が向上。より正確で専門的な対話が可能になりました。

街頭でその使用方法を聞いてみると「メール作成やプログラミングの簡単な関数の作成に使っている」、「設計上のミスなどがないかダブルチェックさせている」、「献立を考えてもらっている。献立を考える時間がなくなり便利」と重宝しているという声が多数。

また、アメリカの統一司法試験では、Chat GPTが合格者の上位10%に入る点数を取れるという検証結果もあります。しかし、海外の一部の学校では生徒の思考力低下に繋がるとしてChat GPTの利用が禁止になるなど、教育現場での使用方法に関しては混乱が起きています。

脳科学者の茂木健一郎さんは、研究でChat GPTを活用しているそうで「こんな日が来るとは思いませんでした。僕だけでなく、脳科学者、認知科学者、人工知能研究者、全員ビックリしている。これほど早く、ここまでの性能のものが出るとは誰も予想していなかったんじゃないか」とその凄まじい進化に驚愕。

食文化研究家で株式会社食の会 代表取締役の長内あや愛さんも、文化研究の際の調べもの、文章の要約などにChat GPTを使っていると言い、「すごく便利で、秘書が増えたような感覚」とその性能を絶賛します。

ラッパーの呂布カルマさんは「僕には必要ない」と断言。「僕は作詞をしたりするが、そういう部分では(Chat GPTは)まだ及ばないというか、使うことはない。今のところ聞きたいことはない」とし、自身の活動において必要性を感じていない様子。

◆人工知能は"知らない”と言えない!?

では、教育の分野においてChat GPTは活用していくべきなのか。長内さんは後輩など周囲の大学生を見る限りでは「論文や課題などにすごく使っている感じ」と印象を語り、「それが本当に正しいのか。メリット・デメリットを考えていかないといけない」と話します。

一方、特殊な職業の自分では使うことはないと話していた呂布さんは、教育では「基本的には必要だと思う」と肯定。懸念されている生徒の能力低下についても「変わらないと思う」と自身の見解を示します。

これに対し、「ふたつのシナリオがある」と前置く茂木さん。ひとつはChat GPTに頼りすぎて記憶力や文章力などが低下してしまうこと。そして、もうひとつは将棋棋士の藤井聡太さんのようにAIを活用することでますます能力を上げるケース。

ここで「Chat GPTは教育に必要か、不要か」を質問してみると、キャスターの堀潤を除く全員が「必要」。

茂木さんは「人工知能は当たり前のもの、至る所にあるものになるので、それに対応しなければ、今後の社会で生きていけないという意味で必要」とその理由を述べ、呂布さんは「学校の教育で最低限みんなに同じことを教えるということに関しては、先生によってムラが出るより、Chat GPTで一定のものを与えたほうがいいのではないか」と私見を語ります。

そうしたなか、唯一「不要」とした堀は「本来は必要だと思う」と言いつつ、「誰に必要かと言えば、僕は(忙しい)先生を早く助けてあげてほしい。生徒ではなく先生に必要」と使い手の問題に言及。「(先生は)ゼロイチを生み出すような教育をする。だから過去のいろいろな蓄積(データ)をまとめたりすることは先生が使えばいい。そこは切り分けたほうがいい」と主張します。

茂木さんによると、研究者のなかで現在ホットな話題のひとつに"ハルシネーション(幻覚)”というものがあり、「人工知能ってデタラメを言うことがあるんですよ」と言います。そして、「事実とは全然違うことを、確信を持って言う。今の人工知能は『知らない』と言えない。(わからないことも)何かでっちあげてしまう」と危惧。

総じて「子どもが単独で使うのは危険かもしれなくて、先生がそれは違うと常識を教えてあげるべき」と先生の必要性を訴えつつ、「だからこそ子どもの頃から(AIに)慣れることはリテラシーとして必要」とも。

◆教育面におけるメリット・デメリット

3月にはChat GPTを親子で体験するワークショップが行われ、そこに参加した子どもからは「従来のAIとは違う感じですごく進化していてビックリした。受け答えが正確で、文章に違和感がなくてすごい」、「実際に使ってみてこんなにいいものなんだって改めて思った」と称賛する声があがる一方で、保護者からは「聞く能力が高くないと良い答えが出ないので、聞く能力を高めるという意味でどんどん使ってほしい」、「自分で考えないといけないという意識が弱まることが怖い」、「年齢にそぐわない情報が入ってこないようにできないと、不利益が大きい」と賛否両論ありました。

改めて、教育面におけるメリット・デメリットを整理してみると、メリットは「調べる・要約・翻訳などの効率が上がること」、「質問にはコツが必要なため、人に聞く力が養われること」など。デメリットとしては「カンニングなどへの不正利用」、「思考力の低下の懸念」、「情報の真偽」、「年齢に不相応な情報の分別」など。

とりわけ、思考力の低下が問題視されていますが、茂木さん曰く、人間の平均IQは実は上がり続けているとか。そして、「その理由はおそらく情報環境の変化だろうと言われていて、インターネットなども含め情報量が増えるなか、(人間の)情報処理能力は上がっている。なので、ひとつの予想としては、Chat GPTのような人工知能が出ることで、人間の知能もさらに上がる可能性がある」と脳科学の見地から指摘します。

◆教育にChat GPTは必要か…Chat GPTの意見は?

「日本の教育にChat GPTは必要なのか」、これをChat GPTに聞いてみると、以下の解答がありました。

「Chat GPTは教育において幾つかの利点を提供している。
1.学習者への個別対応。
2.アクセシビリティ、さまざまなバッググラウンドや学習スタイルを持つ学習者に対して教育機会を提供できている。
3.補助的な学習リソースに使える。課題の解答例や追加資料の提供など。
4.効率的なコミュニケーション、教師と学習者の間のコミュニケーションを効率化し、質問や疑問に素早く対応することができる。

ただし、感情や対人関係のスキルを持っていない。そのため、教育においてはChat GPTを補完的なツールとして利用することが望ましいと言えます。また、ときに誤った情報やアドバイスを提供もあるので、使用には注意が必要」

この解答に、呂布さんは「完璧じゃないですか(笑)」と思わず笑い、長内さんは、読書感想文や論文、レポートなどへの転用を案じていると、茂木さん曰く、そこは研究が進んでいるものの、現状では完璧に見破るのは難しいといいます。

では、Chat GPTを教育の現場で上手く使っていくためには、どうすればいいのか。茂木さんは"人間力・ルネッサンス”との言葉を挙げ、「むしろ人間力が問われると思う」と強調。AIに頼りすぎずに自分を高めるようにし、情報の真偽を判断できる力を身につけるなど「人間力を高めることを教育現場でやっていくことが必要」と力説します。

呂布さんは"放任 大人が子どもに学ぶ”と主張。「なんでも新しい技術は大人よりも子どものほうが上手に使う。自分の子どもを見ていてもそう思う」と実体験を語り、「子どもにやらせて、子どものうちは失敗してもいい。失敗しながら、僕らよりも上手に使えるようになると思う」と意見を述べます。

長内さんは「便利だから使ってしまう、これは止められないと思う」と言い、だからこそChat GPTを使っても能力が低下しない、むしろ向上するような問題作成の重要性を訴えます。

最後に、堀はAIに懸念点はたくさんあるものの「僕はだからこそ人はもっとポジティブを語るようになればいいと思う。相棒に愚痴ばかり言っていたら愚痴っぽいものが生まれるので、もっと未来を語れるような人間になりたい」と願望を述べていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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