2200ヘクタールに拡大、下流域守る
田んぼダム用のせき板を設置する今泉さん(佐賀県小城市で)
佐賀県は近年相次ぐ豪雨災害を受け、田んぼダムの設置やため池の放流ゲートの整備など、水害対策を強化している。2023年度は農家の協力が広がり、田んぼダムの面積は前年度比8割増の2200ヘクタールへと拡大した。JAグループは、県の防災ヘリ運用への協力をはじめとして災害時に自治体と連携する体制を整え、地域一丸で備えを進める。
同県は大型化する豪雨災害を受け、21年秋に内水対策事業「プロジェクトIF(イフ)」を始動した。22年度は34億円、23年度は36億円を措置して、下流域の洪水被害を抑える施策に取り組む。
田んぼダムは22年度から設置を開始。主に筑後川上流域の神埼市、六角川上流域の武雄市などで取り組んだが、23年度は参加自治体が増えた。実施主体は多面的機能支払交付金の対象組織で、県は10アール当たり2000円の協力金を支払う。
19年と21年の豪雨で牛津川下流域が床下浸水した小城市は本年度、456ヘクタールで田んぼダムを始めた。市は専用の切り込みが入った幅43センチのせき板約2450枚を配り、田植えに合わせて排水口への設置を依頼した。
同市で3ヘクタールの水稲を作る今泉重幸さん(60)は、2・2ヘクタールで田んぼダムに協力し、せき板9枚をはめる。今泉さんが所属する佐織環境保全組合では36ヘクタールのうち約29ヘクタールで取り組む。寄り合いでは畦畔(けいはん)が崩れるリスクも説明したが、反対はなかった。今泉さんは「稲は水に漬かっても1、2日は大丈夫。畦畔も機械で直せる。水害防止のメリットの方が大きい」と話す。
市農村整備課は「来年は実施したいと既に手を挙げている組織もある。多くの地域で取り組んでもらい、下流域の被害を最小限にしたい」と期待する。
県は今年、貯水能力の高い焼米ため池(武雄市)の放流施設を整備。従来4、5日かかっていた水量2万リットルを1日で流すことができ、大雨前の水位低下に役立てる。河川やため池などをカメラで監視し、24時間スマートフォンで確認できるシステムも導入した。
JAグループ佐賀も災害時に自治体と協力する。4月、県の防災ヘリの緊急時の離着陸場として、カントリーエレベーターなどJAの27施設を活用する協定を締結。JAさがとJA佐賀市中央は、佐賀市と担当者の携帯電話番号を共有し、災害時の農業被害の把握や融資の調査で連携する。JAさが管内では、農機具の一時避難場所としてJAの施設を提供している。
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