日本政府、北朝鮮と水面下接触か…中国などで複数回、韓国紙報道

韓国紙・東亜日報は3日、日本と北朝鮮の当局者が先月、中国とシンガポールなど第3国で複数回、実務接触していたと報じた。

同紙は「複数の情報消息筋」からの情報として、「北朝鮮と日本は最近、2回以上の水面下接触を行った」とし、「双方の実務陣が中国とシンガポールなどで会ったようだ」と伝えた。また「日本は米国に対し、事前に接触の事実を伝えたようだ」ともしている。

かねてから金正恩総書記との首脳会談に意欲を見せていた岸田文雄首相は、5月27日に行われた拉致被害者の帰国を求める集会で、「条件を付けずに、いつでも金正恩委員長と直接向き合う決意」だとしながら、日朝首脳会談の早期実現に向け「ハイレベルで協議を行っていきたい」と語った。

これに対し、北朝鮮のパク・サンギル外務次官は29日、「(日本が)大局的姿勢で新しい決断を下し、関係改善の活路を模索しようとするなら、朝日両国が互いに会えない理由がない」とする談話を発表した。

もっとも、北朝鮮は「拉致問題は解決済み」との立場を変えていない。東亜日報によれば、双方は今回の実務接触でも「主要事案に対する見解の差を縮められなかった」もようだとしている。その一方、「ただし、会談に対する双方の利害関係が合致すれば高位級交渉につながるとの観測も出ている」と伝えた。

筆者の見解を述べれば、日朝が立場の差を簡単に縮められるとは思えない。

ただ、拉致被害者の田中実さん=失踪当時(28)=と、拉致された可能性を排除できないとされる金田龍光さん=同(26)の問題が突破口になるとの見方もある。

田中さんと金田さんを巡っては、元外務次官らがメディアのインタビューで、北朝鮮での2人の生存情報を認めている。北朝鮮による「一時帰国」の提案を、当時の安倍政権が拒否したとの報道も出ている。安倍政権には、横田めぐみさんらの情報がないまま、2人の帰国をもって北朝鮮に「幕引き」を許せば、「政権がもたない」との判断があったとも言われる。

仮に、田中さんと金田さんの件をもって「成果」と受け止められる雰囲気が日本国内にあり、そこからさらなる進展を生む展望が開けれるのならば、何らかの新しい動きが出る可能性はあるだろう。

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