長崎港でクルーズ船再開 寄港回復も経済効果は期待外れ 消費動向変化への対応が鍵

クルーズ船から下り、大浦天主堂周辺を散策する中国人観光客=6月21日、長崎市南山手町

 長崎港で国際クルーズ船の受け入れが再開して3カ月半。年内の入港数は100回を超える見通しで、順調に推移している。だが、長崎市内の飲食店や土産品店からは「期待したほど経済効果が感じられない」との声も聞かれ、新型コロナウイルス禍で変容した消費動向への対応が鍵を握りそうだ。
 新型コロナ流行で途絶えた長崎寄港は3月16日、約3年ぶりに再開。6月末までに計39回、今後の予定を含めると年内で計115回にまで回復する見込みだ。コロナ禍前の実績は2018年220回、19年183回だった。
 コロナ禍前は全体の8割程度を占めていた中国からの来港も6月に入り復調しつつある。9日の「ブルードリームスター」を皮切りに、年内で計47回を予定する。
 6月21日は、乗員乗客約1500人の「Zhao Shang Yi Dun」(4万8千トン)が上海から初入港し、接岸場所に近いグラバー園や大浦天主堂などは散策する中国人客らでにぎわった。ただ、カステラなどの土産を購入する人はまばら。乗客の80代夫婦は「長崎を訪れるのは3度目だから買わない」、別の50代夫婦は「午後は船に戻って休むつもり」と話した。
 同乗する旅行会社の担当者は「中国人観光客は『爆買い』のイメージが強いと思うが、最近は旅自体をゆっくり楽しみたい人が多い」とトレンドの変化を説明する。旅の目的も寄港先によって異なり「長崎はショッピングより、歴史的建造物の見学など体験型観光が求められる」という。
 中国系のキャッシュレス決済に対応していない店も複数あった。大浦天主堂そばの土産店「長崎マリア館」は現金支払いに限られ、会計直前に購入を諦める訪日客も少なくない。同店の松永博行社長は「現金のみとお断りするのが申し訳ない。県にはインバウンド(訪日客)誘致だけじゃなく、キャッシュレス決済導入なども支援してほしい」と求める。
 松が枝国際ターミナル内の外貨両替機休止の影響を指摘する声もある。設置する十八親和銀行(長崎市)によると、コロナ禍を受けて20年9月から営業を停止。その後、財務省のガイドラインが改定されたため、再開に向けて準備中という。
 長崎国際観光コンベンション協会は、クルーズ船客のニーズを改めて探るため動向調査を実施する方針。市内での行動や消費額、満足度などのデータを収集、分析して施策を練る考えだ。同ターミナル内での「観光きっぷ」販売にも乗り出し、市内周遊や消費拡大を促す。

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