1周遅れから優勝飾ったローヴェ。希望を抱けたのは「日曜の朝だった」とニック・イェロリー/スパ24時間

 7月1日から翌2日にかけて、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで伝統のスパ24時間レースが行われ、既報のとおりローヴェ・レーシングの98号車BMW M4 GT3が総合優勝を果たした。フィリップ・エングとマルコ・ウィットマンとともに表彰台の頂点に立ったニック・イェロリーは、ローヴェが日曜日の朝にリードラップに戻ったことで、このレースでのポジティブな結果を信じ始めたと語った。

 イエロリー、ウィットマン、エングの3名がシェアした98号車BMWは、週末に行われたファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパとIGTCインターコンチネンタルGTチャレンジの“シーズンハイライト”イベントにおいて、トップ20圏外からスタートした後、レース序盤に給油の問題によってトップグループから1周遅れとなった。

 ローヴェ・レーシングは最終的にリードラップに戻り、ひと晩で前進を始めたものの、同チームがポジティブな結果を得る希望を抱き始めたのは2日(日)の朝を迎えてからだったという。

「日曜日の朝、おそらく10時くらいだったと思う」とイェロリーはSportscar365に語った。

「僕たちは独自の戦略をやめ、短いフルコースイエロー(FCY)のおかげで5秒を取り戻すことができた。それは僕たちがペースを取り戻すきっかけになった」

「実際、僕たちのペースは時間(の経過)とともに上がっていった。その時点で、表彰台の可能性があることはわかっていたよ。ただし強いクルマがたくさんいるし、すべての物事をうまく運ばなければならないため、勝利はまた別だと考えていた」

 チーム代表のハンス・ピーター・ナウドルフは、「チームはレース序盤に給油に関するふたつの問題を別々に対処したが、より代償が大きかったのはふたつめの問題だった」と説明した。

「給油担当のひとりに問題があったんだ。彼は給油リグを適切に接続することができず、その結果最大流量で燃料が入らなかった」

「(そのときのピットストップでは、ガソリンが)通常の30パーセント程度しか入らなかったため、次のスティントを短くせざるを得なくなった。それによって周回遅れになったんだ」

 今大会で自身3度目のスパ24時間総合優勝を果たしたエングは、この後退がローヴェ陣営にフラストレーションをもたらしたことを認めた。

「レースのある時点では、ピットの隅に電話を投げつけたくなるほどだった」と彼は述べた。

「ここ(全長7kmのスパ)で1周遅れたら、それを取り戻すのは非常に難しい」

「しかし、僕たちはFCYとセーフティカー(SC)の状況を巧みに利用することができた。それが僕たちがレースに復帰できた理由だ」

BMW車のスパ24時間制覇は2018年以来5年ぶり25回目。前回はワーケンホルスト・モータースポーツのM6 GT3が勝利を飾っている。

■FCYが出ないよう祈り続けたエング

 前述の問題の後、98号車BMWは他のプロクラス車両から大きく順位を落として走行することになった。

「僕はクルマがピットレーンを出るたびにいつも祈っていた。なぜならスティント開始から20分以内にFCYが出れば、僕らにとっては“毒”だったからだ」とエング。

「幸運にもそれは起きなかった。だから、僕たちはいつも(他車と)ピットイン・シークエンスが完全に違っていたんだ。そして、最後のFCYが出たとき、みんながひとつになった」

 ローヴェ・レーシングは17時間目の終盤に短いFCYが出されたときにピットインした唯一のプロカーだった。このイエローはオー・ルージュで立ち往生したメルセデスAMG GT3を回収するために出されたものだったが、当該車両は皮肉にも総合2位となったアコーディスASPチーム88号車メルセデスAMG GT3の姉妹車だった。

 イェロリーはショートFCYの間に98号車をピットに入れた決定について、「いい判断だったと思う」と語った。

「僕たちが望んでいたものを完全に得たとは思わないけど、僕の理解している限りでは5秒は稼げたと思う」

「30秒のトラックリミット・ペナルティもあったので、あらゆるチャンスでできる限りのことをする必要があった」

 約1時間後、同じBMW陣営のワーケンホルスト・モータースポーツの車両がコース上でストップしたため、このレースでの最後のSCが出動した。

 このとき主要なプロクラスのコンテンダーがすべてピットインしたため、ローヴェがとってきた他車と異なる戦略は転換され、他と同じシークエンスに。このタイミングで98号車はDTMドイツ・ツーリングカー選手権の2冠王者ウィットマンにステアリングが託され、レースをリードして状態で再スタートを切った。

「それは非常にうまくいった」とイェロリー。

「僕の理解では、もしもSCが入らなければ、良いペースと燃費の数値があったのでレースはもっと簡単だったかもしれない」

「でもFCYとSCによってトップ集団は元に戻された。そんななかマルコ(・ウィットマン)は素晴らしい仕事で後続を引き離してくれた。また、フィリップ(・エング)は僕たちの仕事を仕上げてくれたんだ」

表彰台で優勝トロフィーを掲げる(左から)ハンス・ピーター・ナウドルフ、ニック・イェロリー、フィリップ・エング、マルコ・ウィットマン 2023スパ24時間
2020年以来、3年ぶりにスパ24時間レースを制したローヴェ・レーシング

© 株式会社三栄