スマホで撮影、アプリで山田錦の肥料量が分かる! 県農林水産センターと京大開発 生育判断が高精度に

出穂前の稲株を撮影する兵庫県立農林水産技術総合センター職員=加東市沢部(兵庫県立農林水産技術総合センター提供)

 酒米「山田錦」の収穫量と品質の安定を目指し、兵庫県立農林水産技術総合センター酒米試験地(加東市)は、京都大大学院農学研究科などと共同で、出穂前の稲株をスマートフォンで撮影すれば必要な肥料の量が分かるアプリを開発した。出穂前に散布する肥料を「穂肥」といい、従来は農業者の経験やノウハウ頼みだったが、アプリを使えば手軽に高精度の生育判断ができるという。実証実験を経て、2024年にも農家に提供する予定。(三宅晃貴)

 山田錦の栽培では、生育状況に応じた追肥が広く行われている。肥料をまく量は個人の経験頼みで生育状況に差があったほか、気候に合わない場合には収穫量が減ることもあった。試薬を用いた診断はあったが、手間がかかっていた。

 開発したアプリは「ライスカムY」。両者は16年から共同開発を進め、京大側がプログラミングを担い、同試験地がデータを収集して計算式に反映させた。山田錦のみが対象で、米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」のスマホで利用できる。

 出穂の20~25日前、茎の中にできる穂の赤ちゃん「幼穂」が形成される時期に、稲株の上端部から70センチ上にスマホをかざして撮影する。するとアプリは4株ごとの葉の面積の割合を把握。現在の生育量を推定し、必要な穂肥量を表示する。

 20年の実証実験では、アプリの診断に基づいて従来の2倍の追肥をした結果、もみ数や品質で目標値を達成した。また、追肥せずに栽培した稲と比べると、もみ数は約10%増えた。

 22年からは地域の農家を対象とした現地試験を始めており、23年は県内5カ所で実施する予定。同試験地の担当者は「正しい条件下で利用すると正確な診断ができる。ただ、光量など撮影条件が繊細なので注意して使う必要がある」と話す。

 両者は「ライスカムY」に先立ち、スマホで撮影するだけで稲刈りの最適期を確認できるアプリ「グレインズカム」も開発している。現在は2つのアプリを用いた現地での実証実験に取り組んでおり、今後、多様な撮影条件に対応できるよう改良し、産地での実用化を進めていく。

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