今後日本は世界各国に軍事支援が可能になる!? 議論が足りない“OSA”を考察

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。6月27日(火)放送の「New global」のコーナーでは、議論が足りないとされている“OSA”について考察しました。

◆OSA(政府安全保障能力強化支援)とは?

OSA(政府安全保障能力強化支援)とは、同志国の軍を無償で直接支援することができる新しい枠組みです。そもそも日本の無償支援はODA(政府開発援助)がありますが、これはそれとは別に軍事支援を可能にするもの。ただし、弾薬や戦車といった殺傷能力があるものではなく、警戒監視用レーダーなどの資機材が提供できるようになります。

対象となるのは、原則として開発途上国。民主化の定着や人権、経済状況などを踏まえ総合的に判断するとしています。また、国際紛争との直接の関連が想定し難い分野に限定して協力するとも。すでに2023年度の予算として20億円計上されており、フィリピン、マレーシア、バングラディッシュ、フィジーに対して実施予定。現在、コンサルタントと契約を結び、調査中と政府は説明しています。

◆紛争国の規定されるのは? OSAにはさまざまな問題が…

そうしたなか、6月26日には外務省職員を招いたOSAに関する意見交換会が開催され、キャスターの堀潤も参加。総じて「非常に興味深かった」と感想を伝えます。

例えば、ロシアに侵攻されているウクライナへの支援は可能かという質問がありましたが、外務省スタッフは「可能」と回答。ウクライナは開発途上国であると説明していたそうです。OECD(経済協力開発機構)の枠組みで見ると、開発途上国は世界に130以上。そのなかには「実は我々が知っている高度に成長した国だと思う国も、開発途上国となっている」と話します。

また、外務省としては紛争国を支援対象外としていますが、紛争国を国連の措置が取られている国とすると、該当するのは北朝鮮のみ。この見解に「世界で紛争当事国が北朝鮮しかないということになると、実質的にはどこの国にでも武器支援ができる」と案じる声もありました。

さらに、OSAの成り立ちについても「安保三文書にいきなり入り、予算がつく。法案審議のような機会もない。そういうやり方自体が秘密主義でおかしい」という声があがるも、外務省としてはきちんと審議し、立ち上がった制度と認識していると述べ、すでに夏の概算要求にはOSAという名前は出していないものの、政策のために必要な予算として事項要求しているそうです。

◆OSAは国際的な紛争を起こさないための援助!?

その他、今回の会議では参加したNPOから12の質問があり、ここで堀がそれらをまとめて紹介。

例えば、OSAの目的について「日本の平和主義が大きく転換されるのではないか」という意見がありましたが、国としては国際的な緊張が高まるなか、抑止を効かせるため、国際的な紛争を起こさないために援助するという考え方だったと堀は振り返ります。

そして、支援方針に関しては、前述のウクライナの他、堀はフィリピンに注視。外務省がフィリピンへの支援に関する説明を行う際には、シーレーンの確保を意識していたそうで「日本にとっては中東から連なるシーレーンが抑えられてしまうと脅威がある。明言はしていないが、いわゆる中国の存在は大きいと思う」と推察。

また、実施上の原則に関しては、武器輸出三原則に代わる「防衛装備移転三原則」の枠内で支援するとのことでしたが、これは日に日に見直しが行われているため、そこに引っ張られてしまうのではないかと懸念し、透明性の確保においては「支援対象国に対してモニタリングする」とされているものの「具体的に実効性のある調査ができるのかは明らかになっていない」と堀は憂慮します。

さらなる注目点として堀が挙げたのは「民主化していない国などに実施しないのか?」ということ。権威主義的で非人道的な行為を行っている国に支援はしないかと言えば、外務省は「国がそうだからといって支援しないわけではない」とし、調査次第では総合的に判断し、支援するということでした。

こうしたOSAについて、関西大学特任教授の深澤真紀さんは「今回は"同志国”という言い方で(ODAとは)全く意味合いが違う。途上国を支援するODAと真逆と言ってもいい」と危惧。「(目的が)戦争を停止するため、内戦から人道的に守るためということであれば(対象となるのは)同志国ではない。そうしたことをきちんと決めていないことが、何よりも問題」と議論が不十分であることを指摘します。

ジャーナリストで海洋冒険家の辛坊治郎さんは、これだけ大きな方針転換であれば「有権者の審判を経て、政治家が決断すべきこと」とし、それができていない政府を非難。「今の岸田政権は政治のグリップが握れていない。だから、官僚・役人がやりたいと思うことは理屈を作ってでもやっている。政治のグリップが握れていないことがこの問題の本質」と指摘していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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