富山市消防局が「日勤救急隊」開始 日中の出動増加や働き方改革に対応

訓示を受ける日勤救急隊員(左から3人)

 富山市消防局は3日、富山県内で初めて「日勤救急隊」の運用を始めた。救急隊員は原則24時間勤務だが、日勤は平日午前8時半~午後5時15分。市内での出動件数は日中を中心に増えており、隊員の負担が大きくなっているのが理由。子育てや介護などとの両立にもつながると見込まれ、市消防局は「働き方の選択肢を増やし、隊員が安心して救急現場に立ち続けられるようにする」と話す。

 日勤救急隊は富山消防署に設けた。富山市消防局内で希望者を募り、男性2人と女性1人の計3人を任命した。勤務時間は平日のみで、土・日曜や祝日が休みとなる。

 日勤の運用を始めた背景にあるのが、出動件数の増加だ。市消防局によると、昨年度の出動件数は約2万1700件で、統計開始以来初めて2万件を超えた。このうち54.9%が午前8時~午後5時の時間帯で、搬送者のうち高齢者が7割近くを占めたという。

 出動件数の増加によって隊員の負担は大きくなっている。1日に15件以上出動するケースもあるほか、昨年1~3月には市内16救急隊のうち13隊が同じ時間帯に出動。呉羽の救急隊が、14キロ以上離れた水橋地区に急行したこともあった。

 負担増大の課題に対応するため、市消防局は昨年10月から日勤救急隊の導入を検討。全国の消防の先行事例を参考にし、午前8時半~午後5時15分に時間を限定した救急隊を富山消防署に創設した。同署として隊員総数も増やしたことで、日中の多忙な業務にもより迅速に対応できるという。

 新たな勤務形態を設けたことで、もう一つ期待できるのが隊員の働き方改革だ。富山市の救急隊員は24時間勤務の2交代制で、1日おきに出勤。昼夜を問わない仕事だけに救急隊を諦めるケースもあり、担当者は「女性や介護・育児を担う隊員にとって働きやすい環境をつくりたい」(警防課)と話す。

 富山消防署で日勤救急隊に任命された3人は、いずれも30代の子育て世代。3日は同署で運用開始式が行われた。

 5歳と11カ月の子どもを育てる加藤絵美理さん(30)は「これまで隔日勤務だったため、丸1日家族に会えなかった。日勤になり、夜の時間に毎日子どもの世話ができるのはありがたい」と話した。

救急車内を点検する日勤救急隊員

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