EVの冷房消費電力3割削減 東レ、高遮熱フィルム開発 5G通信にも対応

東レ株式会社(以下、東レ)は6月28日、次世代モビリティ向け高遮熱フィルムを創出したと発表。このフィルムは、高い遮熱効果による冷房消費電力抑制・航続距離向上、車内の快適性向上などが見込まれており、5G通信にも対応できるという。

東レは、ナノスケールの厚みのポリマー層を数百~千層重ねたナノ積層フィルムPICASUS(ピカサス)を上市している。今回開発したフィルムは、このナノ積層技術を深化させ、各層の厚みを1nmレベルで高精度に制御したものだ。

また、このフィルムをEVのフロントガラスに実装した実証も行っている。さらに、最大で夏場の走行時の冷房消費電力を約3割削減でき、航続距離を約6%向上できることを実証した。加えて、夏場環境条件でも-2℃の体感温度抑制を示し、搭乗者の快適性向上も確認している。

さらに、このフィルムは、金属を用いないことから5G通信電波への高い透過性も備えている。自動運転や安全性向上のためさまざまな通信機器が活用されており、特に5G通信に対応するための電波透過性の向上も必要だ。このような状況に対し、一部の自動車で採用される金属スパッタガラスでは、優れた遮熱性能を示す一方で電波透過性に課題がある。同社は、自動車フロントガラスやサンルーフに対応できる大面積フィルムの供試を進め、実車搭載を目指して顧客評価を本格化している。

なお、同社は、この技術により、次世代モビリティのカーボンニュートラル促進やコネクテッド対応・自動運転技術の拡大に貢献していく。

(出典:東レ Webサイトより)

© 株式会社自動車新聞社