熱中症の不安切々、市長を動かした匿名の手紙 全児童へ「背中ひんやり」の贈り物 たつの

熱中症対策を直訴する手紙を送り、冷却パッドをプレゼントされた梅村凛太郎君=たつの市揖保川町黍田

 「たつの市長さんへ。ぼくは市内の小学五年生です。毎日とても暑いです」。匿名の手紙が昨年7月、兵庫県たつの市役所に届いた。通学で熱中症になりそうなこと、対策グッズが欲しいことを切々と訴えていた。市教育委員会は1年かけて検討し、ランドセルに取り付ける冷却パッドの配布を決定。手紙を送った児童も判明し、3日に山本実市長が訪問してパッドを手渡した。(直江 純)

 手紙を送ったのは、神部小学校(揖保川町黍田)の現6年生、梅村凛太郎君(11)。通学は片道2.4キロを歩くという。手紙では「汗をいっぱいかいて顔や背中がびしょびしょで頭がボーッとします」と体験を書き、「工事のおっちゃんが着ている空調ベスト」か「顔や肩が日陰になる日傘のような大きな帽子」が欲しいと要望した。

 手紙は匿名だったが、神部小の校名は書いてあった。山本市長は昨年9月、返礼として同校の5年生を訪ねたが、梅村君は「恥ずかしくて」と名乗り出なかった。級友らに「そんな手紙を書くのはきっと梅村君だ」とうわさされ、その後、観念して認めたという。

 市教委は3年前に水でぬらす冷感タオルを全児童に配布したが、手紙を受けてさらなる対策を検討。市内に本社があるランドセル大手「セイバン」に相談し、同社が開発した背中用の冷却パッド(3190円)を購入し、市内の全児童約4千人に配布することを決めた。

 パッドは冷蔵庫で冷やした保冷剤を入れるタイプで168グラムと軽量。保冷効果は登校時のみだが、背中の汗取り効果もあり下校時にも役立つという。山本市長からパッドを手渡され、早速、試した梅村君は「ひんやりして気持ちいい!」と笑顔を見せた。

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