事前手続きは不要、1日最大「640円」で全線乗り放題!福岡市地下鉄でタッチ決済活用の新割引サービス、7日から

タッチ決済機能付きのクレジットカード=イメージ=(写真:nevodka / PIXTA)

世界水泳選手権2023福岡大会に先立ち、福岡市地下鉄で2023年7月7日、クレジットカードなどのタッチ決済を活用した新割引サービスが始まります。

この取り組みは、タッチ決済を活用した地下鉄への乗車で1日の利用額が640円を超える場合、超過分の利用額は割引するというものです。利用者側の事前の手続きは不要で、タッチ決済機能のあるカード・スマートフォン・ウェアラブル端末などで改札を通過すればOKです。

タッチ決済対応改札機利用イメージ

たとえば福岡空港駅到着後、大濠公園駅 → 西新駅 → 赤坂駅 → 博多駅という風に1日で移動した場合、通常では合計1,030円になりますが、これが640円で収まり390円お得になる計算です。短い距離の移動なら通常の料金で済み、たくさん乗る場合は一日乗車券代わりになります。

新サービス利用料金イメージ

ただし注意点も。本サービスは「同一のカード番号かつ同一の媒体」で福岡市地下鉄に乗車した場合にのみ適用されます。たとえば、同じカード番号でもクレジットカードでのタッチ決済額とスマートフォンでのタッチ決済額では、媒体が異なるため合算して計算されません。

福岡市地下鉄では2022(令和4)年5月31日からクレジットカードのタッチ決済機能を活用した実証実験を開始、ことし3月27日には七隈線の延伸開業に合わせ対象駅を全3路線・全36駅に拡大しました。1日あたりの利用者平均は昨年度平均の7倍以上となる3,300人を超えています。三井住友カードによりますと、6月以降は1日の乗降数が5,000件を超える日も増えているということです。

上限額を定めてそれ以上は請求しない「キャッピング」のサービスを導入するのは、鉄道としては今回の福岡市の事例が初めて。実証実験期間は2024(令和6)年3月31日までとしています。

【データで見る】福岡市地下鉄のタッチ決済利用状況

2023年3月の全線対応以降、利用件数は約5.4倍に(※三井住友カードが把握した6月30日までの速報値)

三井住友カードが分析した「福岡市地下鉄のタッチ決済利用状況」をお伝えします。利用状況については、三井住友カードのデータ分析支援サービス「Custella」を活用し、個人・加盟店が特定できない統計情報に加工したうえで、福岡市地下鉄の利用者の特徴を分析したものとなります。

インバウンドの利用状況

インバウンドの利用状況

入国規制が緩和された2022年10月以降利用者は右肩上がり、4月以降は欧州方面からの利用者も増え、総数が急増。直近5月のデータを見ると、韓国人がインバウンド利用者の57%を占め、タイ人が14%、アメリカ人7%と続いています。利用区間は福岡空港⇔博多間が最多。顕著に利用が多いのは福岡空港駅、博多駅、天神駅の3駅です。

インバウンド利用者の乗車後の消費傾向では、県内消費額の約9割を福岡市博多区と同中央区での消費が占める状況です。消費業種は空港店舗が最も多く、ショッピングセンター、ホテル・旅館、飲食店・レストランと続きます。空港・ショッピングセンターなどでお土産をまとめ買いする傾向が見られるようです。

国内利用者の分析 全線対応で県外・県内の利用者が逆転

国内利用者の動向。七隈線開業・全線対応後に利用者が急増していることが分かります

国内利用者の分析を見てみましょう。人数ベースで2022年5月の実証実験開始以降の全期間のデータを見ると、約57%が圏外居住の方でした。しかしながら、3月27日の七隈線開業・全線対応後に県内利用者の利用が急増しており、4・5月は県内居住者の利用が過半数を占める結果に。

利用意欲が最も高いのは20代の男性で、30代男性、40代男性と続きます。利用傾向を性別から分析すると、男女比は6:4で男性が多く、県外居住者では7:3ということで、県内では女性の利用者が比較的多い傾向にあることが分かります。

利用者の年齢・性別

県外居住者は首都圏・関西圏・愛知県からの利用が多く、男性が7割を超えることから、出張時の利用が多いものと考えられます。九州エリアでは隣県の佐賀県・熊本県、そして沖縄県からの利用者が多い状況です。

GW期間は九州エリア居住者の利用が急増しており、鉄道を利用した旅行ニーズが増えたと推測されます。消費傾向としては旅行や交通、映画、美術館などへの支出が特に多いようです。

福岡県内居住者の傾向としては、平日の通勤時間帯での利用が多く見られます。昨今では「定期券を購入する頻度ではないが、週数日定期的に出社する」といったテレワーク併用のワークスタイルが定着しつつあり、こうした方の利用意向があると考えられるでしょう。女性は週に1~2度程度、天神・博多方面へのお買物などを目的とした利用意向が高いと推測されます。

乗車後の利用傾向では、平日は出勤時のコンビニ利用、帰宅時のスーパー利用が多く、休日はショッピングセンターや百貨店の利用が目立ちます。福岡空港があるため、空港店舗の利用も多いようです。

利用者アンケートから見る「タッチ決済」への期待

三井住友カードの利用者アンケート(2023年2月、500名)によりますと、全国交通ICカードをお持ちの方は全体の98%ほどで、タッチ決済を利用した理由については「新しい技術に興味があったから(32%)」「クレジットカードのポイントが貯まるから(29%)」「普段利用しているクレジットカードが使えるから(28%)」と上位は拮抗。「切符を購入したり、チャージが面倒だから」と答えた方は6%にとどまりました。

利用目的については「観光」が最多の57%を占め、「出張(21%)」「買い物など日常の移動(15%)」と続きます。「今後もタッチ決済を利用したいと思いますか?」という問いに対しては、「旅行先などで利用できる場合は利用したい(40%)」「日常での利用手段として利用したい(40%)」が大半を占め、「日常、旅行先などで利用したくはないが、手持ちの交通系ICカードが利用出来ない場合は利用する(12%)」「手持ちの交通系ICカードを利用する(7%)」は少数派でした。

また「タッチ決済を利用したサービスで期待されるもの」については、「一日乗り放題定額料金サービス(46%)」が最多。「他の鉄道会社との乗継割引サービス(37%)」「定期券として利用できる定額料金サービス(10%)」と続きます。今回の福岡市地下鉄の新サービスは、この一日乗り放題定額料金サービスを導入したものになります。

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