プラスチック汚染問題の解決へ 大手12社が業種超え、一斉に「公約」

WWFジャパンの呼びかけで発足したプラットフォーム、「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」のイベントで、プラスチック汚染の解決に向けた「公約」を共に発表した参画企業の面々(WWFジャパン提供)

プラスチック汚染問題の解決に向け、2025年をターゲットに自主的な対策を打ち立てる企業が連携する「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」に参画する12社がこのほど、プラスチック削減をめぐる自社の包括的なコミットメントを一斉に発表した。これまで容器包装などに多くプラスチックを使ってきた食品、飲料、日用消費財、宅配など幅広い業界の大手企業が、それぞれに、期限付きの野心的な目標や取り組みを「社会への公約」として開示することで、サーキュラーエコノミーへの社会転換を主導する役割を果たすことを狙いとしている。(廣末智子)

WWFが呼びかけ、2025年をターゲットに

「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」は世界自然保護基金(WWF)ジャパンの呼びかけで、2022年2月に発足した、業種横断型のプラットフォーム。参画するには「WWFのサーキュラー・エコノミーの原則」に賛同した上で、プラスチックを使用した容器包装と、使い捨てプラスチックについて、2025年をターゲットに、

1、問題のあるもの、および、必ずしも必要のないものの使用を取りやめる。さらに環境負荷低減に向けて削減目標を設定した上で取り組む。代替素材への切り替えの際は、その持続可能性を十分考慮する
2、可能な限り、リユース(他の素材のリユースを含む)へと切り替える
3、可能な限り、リユース、リサイクル可能なデザインとする
4、リサイクル素材の意欲的な使用目標を設定する
5、リユース、リサイクル率を向上させるためにステークホルダーと協力する

からなる5項目を包括的に行うことをコミットメントすることが要件となる。

参画企業は上記をどう具体的に進めるかについての計画をWWFジャパンに提示し、それをもとにWWFジャパンが定期的なレビューを行って改善を図る。各企業にはそれらを透明性を持って社会に積極的に開示していくことが期待されている。

特設サイト上に並ぶ「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」に参画する企業リスト

発足時の参画企業は、キリンホールディングス、サントリーホールディングス、資生堂、日本航空、日本コカ・コーラ、ニッスイ(日本水産)、ネスレ日本、ユニ・チャーム、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス、ライオンの10社。これにこのほど、Uber Eats Japan(ウーバー イーツ ジャパン)と江崎グリコの2社が加わるとともに、全12社のコミットメントが特設サイト上で一斉に公開された。

各社の主なコミットメントと事例は次の通り。

キリンホールディングス
2022年からドラッグストア店舗での使用済みペットボトル回収の実証実験を開始。鉄道会社と共同での回収スキームの構築も進めている。今後も使用済みペットボトルの分別回収、回収の効率化を推進

サントリーホールディングス
国内飲料事業では2023年に使用する全ペットボトル重量のうち50%以上でサステナブル素材(リサイクル素材あるいは植物由来素材)を使用することを目指す(2022年の実績は46%)

資生堂
スキンケアやメイクアップ製品において、詰め替え・付け替え製品を配置することで、本体容器のリユースによる使い捨てプラスチックの削減に取り組む。2022年には国内で約260SKU(流通・小売業で在庫管理を行う際の最小単位)の詰め替え・付け替え製品を販売。使用後にリサイクル可能な新しい付け替え製品の展開も拡大中

日本航空
客室・ラウンジにおいて提供するすべての使い捨てプラスチック用品について、2025年度までに「新規石油由来全廃」の目標を掲げており2022年度の削減実績は45%(2019年度重量実績ベース)

日本コカ・コーラ
日本国内において2030年までにすべてのペットボトルを100%リサイクルPET素材、または植物由来PET素材に切り替える。2022年第1四半期時点でのリサイクル素材の使用率は50%を超えており、2023年開始時点でコカ・コーラをはじめとした4ブランド、44製品に100%リサイクルペットボトルを使用

鮮魚用の通い箱(ニッスイHPより)

ニッスイ
国内すべての生産工場において原材料のコメ、牛乳、玉ねぎなどの容器(袋)に関し、リユース可能な素材・形態への変更を検討。“通い箱”への置き換えを行い、リユースを推進。物流においても、主に生鮮マグロの輸送について発泡スチロール梱包から、リユース可能な“通い箱”への転換を推進

ネスレ日本
2019年から始めたキットカット大袋商品の外袋素材をプラスチックから紙に変更する取り組みは2020年にほぼすべてのキットカット大袋製品へと拡大、取り組み開始以来累計1150トン(2022年末時点)のプラスチックを削減

ユニ・チャーム
2015年に使用済み紙おむつのリサイクルプロジェクトを開始。使用済み紙おむつの水平リサイクル設備を2030年までに10以上の自治体に導入することを目標にする。またリサイクルしたプラスチックフィルムなどを活用してごみ袋を製造し、紙おむつの回収に用いるなど、リサイクル活動を一人でも多くの消費者に参画してもらえるよう取り組む

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス
2025年までに非再生プラスチックの使用量を50%削減、使用するプラスチックの25%を再生プラスチックに、プラスチック・パッケージを100%、再使用可能・リサイクル可能・堆肥化可能とする。また販売量よりも多くのプラスチックパッケージの回収・再生を支援する

ライオン
公益財団法人日本容器包装リサイクル協会を通じて使用済み容器のリサイクルに貢献。今後はより高品位なリサイクルができるよう、技術開発に務める。複合素材で構成されている容器に関してはモノマテリアル化などを推進し、よりリサイクルしやすい包装仕様へと順次切り替える

江崎グリコ
マイルドカフェオレ(500ミリリットル)で2019年3月からストローレスを実施、2022年4月からは学校牛乳でストローレス容器を採用し、ヨーグルトカップの印刷をシュリンク印刷から直接印刷に変更。2021年3月に策定した「Glicoグループ環境ビジョン2050」のなかで、2050年までに、生産技術向上および規格見直しによる減量化やバイオマス素材への転換等を通じ、プラスチック容器包装の全てをリサイクル原料に切り替えることを掲げる

Uber Eats Japan
2025年までに日本を含むアジア太平洋地域において、プラットフォーム上で配達される注文の80%に当たる使い捨てプラスチックの容器包装をリサイクル素材、堆肥化可能な素材、またはリユース素材に転換する。目標達成の第一歩として日本でUber Eatsに加盟するレストランがこのような容器包装を容易に入手できるよう、専門のポータルサイトを開設

新たに参画のグリコ「コスト高騰で課題山積。1企業では難局を乗り切れない」

コミットメントの一斉公開を機に東京・渋谷で開かれたイベントには12社の代表が揃って登壇し、それぞれの方針を説明しながら決意を表明。新たに参画した江崎グリコの森田裕之・SCM本部グループ調達部部長は、「食品メーカーに限らず、原材料や物流費も高騰する中、包材に使うプラスチックをいかに代替素材に転換していくかは企業にとって大きな宿題だ。コスト面だけでなく、プラスチックを紙に換えると、品質を担保するのが難しいということもままある」とプラスチックの削減を進める上での企業の悩みに言及。その上で、「グリコだけの知恵や経験では難局を乗り切れないと判断し、プラットフォームに参画した。なぜプラスチックの削減が必要なのかを消費者に丁寧に説明し、みなさんと一緒にサーキュラーエコノミーに挑戦していきたい」と意欲を語った。

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