「期待感 抱ける社会に」 長崎県医療的ケア家族会代表・宮田貴史さん 通学支援や病児保育など課題

医療的ケア児の家族の悩みなどを語る宮田さん=長崎市内

 人工呼吸器の装着やたんの吸引などが日常的に必要な子ども「医療的ケア児」。医療技術の発達に伴い従来は助からなかった命が救えるようになり増加しているが、日々の生活の支援態勢はまだ途上にある。昨年5月、長崎県内のケア児・者、家族、支援者らが国への政策提言や情報交換を目的に家族会を発足。代表の宮田貴史さん(42)に活動内容や家族の悩みなどを聞いた。

 -家族会発足の経緯は。
 2年前に成立した医療的ケア児支援法の理念を実現するため、各地の家族会が参加する全国組織「全国医療的ケアライン」が昨年3月に発足した。全国組織の呼びかけ人から、ケア児対象の訪問看護や児童発達支援などの事業所を運営している私の元に、長崎県の家族会を作ってほしいと要請があり、趣旨に共感できたので協力した。県内各地に既に家族のグループはあったが、そのメンバーや支援者らも含め26人が会員になっている。県内在住であれば、医療的ケアの有無にかかわらず、各種障害のある方とその家族や支援者も加入できる。会費は必要ない。

 -具体的な活動は。
 会員から家族会に上がってきた意見や要望を全国組織に伝え、国に対して政策提言をして支援の充実につなげる。そのためにも数の力は必要なので、今後県内では21の各市町にそれぞれ最低1人の会員がいて、全体で50人を目指したい。
 また全国組織から発信されるオンライン勉強会などの情報を会員に提供しているほか、行政や民間から依頼のあった実態調査にも協力。今夏には初めて会員間のオンライン座談会を計画している。
 
 -2021年の県の調査では、県内にケア児・者は少なくとも405人いた。家族はどのような課題に直面しているのか。
 県ケアラー支援条例が今春施行したが、会員にケアラー(ケアをする人)への支援で必要なことをアンケートで尋ねると、通学支援が最も多かった。スクールバスに乗れないため保護者が車などで送迎しなければならず負担が大きい。このほか入院は付き添いが求められ、病児保育は利用できない現状がある。これでは両親いずれかの就労が困難で、収入が不安定になり生活が崩壊しかねない。ケア児の世話を優先せざるを得ず、きょうだいに寂しい思いさせていると心を痛めている保護者もいた。
 
-行政や社会に何を求めるか。
 家族の悩みは多種多様なので、何か制度を作っても必ずそこから漏れる人は出てくる。制度の充実のためには予算や医療・福祉資源が必要なことも分かる。100点満点の制度はないが、声を上げれば改善されるという期待感を抱ける社会であってほしい。

 ※家族会への問い合わせは電子メール(nagasaki.ikea2022@gmail.com)で

 【略歴】みやた・たかふみ 諫早市出身。理学療法士。2児の父。長男は難治性てんかんがあり、医療的ケアが必要。2014年、長崎市内で起業し、訪問看護ステーションなどを経営。親亡き後も障害のある子どもの生活を支えられる地域づくりを目指している。

© 株式会社長崎新聞社