創業97年の老舗豆腐店の新しい挑戦です。代々受け継がれてきた技術を使って生み出したのは、豆乳を使ったスイーツでした。
広島・江田島市 大柿町にある、創業97年の老舗「徳永豆腐店」です。社長の3代目・徳永達也 さん、53歳。昔ながらの製法で素材にこだわった手作り豆腐を作り続けています。
達也さんは、「豆腐を食卓の主役にしたい」と個性的な豆腐を数多く商品化し、ヒットさせています。
11年前には地元に伝わる民話「島ひきおに」から鬼をシンボルにした「島の駅豆ヶ島」をオープンさせました。20種類以上の豆腐と大豆製品を販売しています。地元の人や観光客も集まる江田島の名所です。
後継者不足が叫ばれていますが、徳永豆腐店には、その心配は要りません。長男の隆也さん(27)が8年前、次男の哲弘さん(26)が5年前に家業を継ぐために帰ってきました。達也さんにとって息子たちの存在はまさに鬼に金棒です。
ことし、「豆ヶ島」の隣りに新しい店を構えました。
雨が降る中、大切なものが届きました。店の看板です。
徳永豆腐店 3代目 徳永達也 社長(53)
「最高です」
店の名前「鬼のおやつMIKIYO」の由来は…
徳永豆腐店 3代目 徳永達也 社長
「徳永豆腐店の初代が徳永ミキヨっていう祖母になるんですけど、その人の名前をもらいました。わたしから後継するんではなくて、初代から継承し続けていくっていう、そういうふうに思ってほしいというか」
次男 哲弘さん(26)
「豆腐・大豆に関わる食べ物を作ったりしたいっていう気持ちはずっと変わっていないので、プレッシャーもあるけど楽しいっていうのは一番にありますね」
達也さんは、息子たちとアイデアを出し合い、新たなる一手を打ちました。
徳永達也 社長
「ちょっと右あげたほうがいいんかな、ちょっびっと。OK、OK。行き過ぎ、もうちょい下。OK、OK、ばっちり」
8年前から計画していた豆乳を使ったスイーツ店です。新型コロナの発生など、いろいろな障害がありましたが、やっとここまでたどり着きました。
徳永達也 社長
「描いていたものを本当に目の当たりにすると身が引き締まります」
達也さんは、徳永豆腐店・初代のミキヨさんから代々受け継がれてきた技術により厳選された大豆から作った豆乳で新しい何かを模索していました。
徳永豆腐店 3代目 徳永達也 社長
「とりあえず、みんな、これ、ちょっと食べてみて。今まで作った中で1番ダメじゃ」
徳永さん家族が試食しているのは、豆乳を使ったプリンです。
徳永達也 社長
「甘さの部分でいうと、ちょっと甘さがさらに減った気がするんよ」
妻 由美さん
「(甘さが)分かりにくくなった。カラメル(ソース)のインパクトが強すぎて」
次男 哲弘さん
「ちょっと豆乳のいいところが消えて、卵(の味)がちょっと強く出ている感じがする」
豆乳を知り尽くした豆腐屋だからこそできる知識と技術を使って、おいしい豆乳プリンの試作を繰り返しています。
徳永達也 社長
「豆乳で健康志向だから、こっちのプリンでいいやっていうのは、ちょっと目指すものが違う。逆にその豆乳がこんなにおいしいなんて知らなかったみたいな感じに思ってもらいたいぐらいですね」
もう1つの主力商品になる豆乳バスクチーズケーキです。
徳永達也 社長
「全然、違う」
長男 隆也さん
「このたび、ちょっと変えてみようと思って」
徳永達也 社長
「これはこれでありじゃない?」
次男 哲弘さん
「ちょっとチーズケーキっぽさが薄れたね」
数日後に迫ったプレオープンのギリギリまで納得のいく味を追求します。
長男 隆也さん(27)
― 豆乳バスクチーズの味は?
「自信はぶっちゃけあります。不安もあるんですけど、プレオープン当日に自分が不安にならないくらい研究はしてきたんで、だいじょうぶだろうなっていうのは思ってます」
「鬼のおやつMIKIYO」―。プレオープン当日です。試行錯誤を繰り返し、満足のいく商品ができました。自分たちでその商品を並べました。開店準備万端です。
長男 隆也さん
「ここまでたいへんだったけど、本当にたいへんなのは今からだと思うので力を貸してください」
徳永豆腐店 3代目 徳永達也 社長
「(売り上げ目標は)きょうとあすで(豆乳スイーツ)2000個。きょうで1000個ですかね。あんまり宣伝もしてなかったのでお客さまが来てくれるかどうかっていうところに自信以上に不安が大きいです」
訪れた客
「何が違うんですか? この『鬼のおやつ豆乳プリンオリジナル』と『MIKIYOプリン』」
長男 隆也さん
「けっこう、こっち(MIKIYOプリン)がしっかりした濃厚なプリンになります。甘みが少ないです」
地元の人を中心に広島市や三原市などから多くの客が訪れました。1人で何個も買っていく客も…。出だしから好調な売れ行きです。
購入した人たち
「おいしいですね」
「だいぶあっさりしていて、ちゃんと豆乳と大豆の風味を感じるチーズケーキだと思います。
「カロリーとかも気にしなくて食べられる感じ。女性とか特に食べられるのかなと思いますね」
「ぎっしりだけど、あっさりみたいな」
「すごく濃厚といいますか、おいしいです」
「ふつうのプリンだとただやわらかいだけですけど、これなんとなく粘りというか、口の中で舌にうまくまとわりついてくれる感じ」
「おみやげに持って行ったりなんか、いいかもしれんね」
「びん詰めだから」
「かわいらしいよね、パッケージが」
豆乳スイーツを食べた感想も、見た目も大好評でした。しかし…
徳永達也 社長
― 豆乳スイーツの販売個数は?
「半分(500個)ですね。売り上げ目標の半分(500個)です」
隆也さんと哲弘さんは、売り上げ予想をもっと多く見積もっていました。
次男 哲弘さん
「自分の心の中では、いやいや、そんなもんじゃない。もっともっと(売れる)っていうのが正直なところ、あったので、鼻が伸びすぎていたっていうか、天狗になってたじゃないけど…」
長男 隆也さん
「一番大事なのはとりあえずおいしいものを作ることだと思うので、そこは絶対ぶらさずに、今よりもっとおいしいものをどんどん、どんどん進化させ続けていって、そこから口コミで広がってくれるのが一番いい形なのじゃないかなとは思いますね」
徳永豆腐店 3代目 徳永達也 社長
「たぶん2人とも今、燃えていると思うので一番の収穫というか、これからこのお店が伸びていくにあたって、一番最初に一番大事な経験ができたというふうには思っています」
多くの反省点もあったプレオープン初日でしたが、2人にとっては貴重な経験となりました。
翌日の日曜日にはおよそ1500個の売り上げがありました。しかし、それにおごることなく、7月22日のグランドオープンに向けて準備を怠りません。徳永親子の挑戦は、まだまだ続きます。