NASA火星ヘリコプターとの通信が回復 数週間以内に飛行再開の可能性

アメリカ航空宇宙局(NASA)は6月30日付で、火星ヘリコプター「Ingenuity(インジェニュイティ)」との通信が63日ぶりに回復したことを明らかにしました。Ingenuityの状態は良好で、数週間以内に再び飛行する可能性があるということです。【2023年7月4日13時】

【▲ 火星ヘリコプターIngenuity(インジェニュイティ)。火星探査車Perseverance(パーシビアランス)の「Mastcam-Z」で2023年4月16日に撮影(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS)】

NASAの火星探査車「Perseverance(パーシビアランス)」に搭載されていたIngenuityは、日本時間2021年2月19日朝に火星のジェゼロ・クレーターへPerseveranceとともに着陸。2021年4月に史上初となる「地球以外の天体における航空機の制御された動力飛行」に成功した後、1か月間で最大5回の試験飛行という当初の予定を大幅に超えて運用され続けています。

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PerseveranceやIngenuityを運用するNASAのジェット推進研究所(JPL)によると、2023年4月26日にはIngenuityによる52回目の飛行(水平移動距離約363m、最大高度12m、飛行時間約139秒、いずれも計画値)が実施されました。この飛行はPerseveranceの科学チームのための火星表面の撮影とIngenuityの着陸地点の変更を兼ねていましたが、着陸に向けてIngenuityが降下した際に通信が途絶えました。

重量1.8kg、高さ49cmと小さなIngenuityは地球と直接通信することができないため、運用チームとIngenuityの通信はPerseveranceや火星を周回している探査機が中継しています。52回目の飛行では着陸地点と当時のPerseveranceの位置との間に通信の妨げとなる丘があったことから、通信途絶はあらかじめ予想されており、Perseveranceが通信可能な範囲へ移動した後で通信を再確立するための計画も立てられていました。

Ingenuityチームのリーダーを務めるJosh Andersonさんは「現在PerseveranceとIngenuityが探査しているエリアは起伏に富んだ地形が多く、通信が途絶える可能性もそれだけ高まります」「IngenuityをPerseveranceよりも先行させることがチームの目標ですが、そのため一時的に通信の限界を越えてしまうこともあります」とコメントしています。

JPLによれば、52回目の飛行から2か月ほどが経った2023年6月28日、丘を登ったPerseveranceがIngenuityを見通せる位置に来たところで通信が回復しました。Andersonさんも「Ingenuityとの通信範囲に戻り、52回目の飛行を確認することができてとても嬉しいです」と胸を撫で下ろしています。

【▲ Ingenuityによる52回目の飛行中に撮影された画像の1つ。Ingenuityとの通信が回復してから受信された。右側にはIngenuityの影が写っている(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

前述の通りIngenuityのデータは状態が良好であることを示しているといい、次の飛行は数週間以内に実施される可能性があります。JPLによると、53回目の飛行では西の方角へ暫定的に設定された着陸地点まで移動する予定で、そこを起点にPerseveranceのチームが関心を示している岩石露頭近くの着陸地点を目指してさらに飛行する計画も立てられているということです。

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  • Image Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS
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文/sorae編集部

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