清川村の民家にニホンオオカミの骨 良好な保存状態 村は文化財指定視野に検討 地域にお札配る風習も

展示されている清川村内のオオカミ頭骨の一つ=東京都青梅市の武蔵御嶽神社宝物殿

 100年以上前に絶滅したとされる貴重なニホンオオカミの頭骨4個と前足1個が、神奈川県清川村の民家5軒に良好な状態で保存されていることが、武蔵御嶽神社(東京都青梅市)の依頼で飯塚利行・同村文化財保護委員長が3~4月に実施した調査で確認された。村は貴重な品として、村の文化財に指定することを視野に検討を始めた。

 同神社に今冬、「御嶽講」の関係者を通じて平塚市内の民家から、オオカミの頭骨1個が寄贈された。かつてこの頭骨を調査した当時の国立科学博物館研究者の論文の一部などが同封され、頭骨が元は清川村内の民家に伝えられ、村内には他にも頭骨が保存されていることが分かった。

 清川村は同神社の須﨑裕前宮司が毎年、「おいぬ様」(オオカミ)のお札を配りに行く地域の一つだが、前宮司も同村内の頭骨の存在は初耳。村内の御嶽講関係者に調査を依頼した。

 相談を受けた飯塚委員長が調べると、論文は県立生命の星・地球博物館が発行する学術雑誌の神奈川自然誌資料第11号(1990年3月)に掲載されていたことが判明。飯塚委員長が論文に記された頭骨4個と前足を所有する村民宅を訪問すると、いずれも大切に保管され、神社に寄贈されたのがこのうちの一つだったことも判明した。「扱い方によっては破損することもあるだろうと考えていたが、とてもよい状態で保存されているのに驚いた」と飯塚委員長。

 清川村内でもオオカミの頭骨の存在はあまり知られておらず、岩澤吉美村長や山田一夫教育長も異口同音に「昔、オオカミのお札を見た記憶はあるが、村内に頭骨があるとは知らなかった」と驚いている。

◆ニホンオオカミ
 かつて本州、九州、四国に生息し、1905年(明治38年)に奈良県で捕獲されたのを最後に絶滅したとみられ、国内にははく製が3体しか存在しないといわれる。考古学者・直良信夫が研究し、著書「日本産狼の研究」(1965年)にまとめた。同書では丹沢周辺のオオカミの頭骨などが多く調査されている。

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