温泉地の課題とガストロノミーツーリズム

日本の温泉地は、多くの課題を抱えている。特に東京、京都、大阪のゴールデンルートを外れると客室稼働率が低く、今日のインバウンドブームの恩恵は、いまだ十分には、行き渡ってはいない。

温泉地の悩みは、三点に集約

一つは、そもそも地方の人口が減少し、高齢化していて需要が低下しているところへ旅行形態の変化が追い打ちをかけた。

インターネット時代が到来し、誰もが簡単に自分の行きたい時に行きたい所へ行けるようになった。情報も豊富になり、旅行代理店の主催するお仕着せの団体旅行は急速に減少し、FIT(free Independent traveler)がほとんどになった。

こうした時代には、勝ち組と負け組がはっきりしてくる。まずは発信が重要だ。特色があって、個性的で心地よい旅館、温泉地全体で付加価値を高めた、黒川温泉等の突き抜けた特徴のある温泉地は、口コミが口コミを呼んであっという間に世界にファンが拡がる。

ガストロノミーツーリズムの優位性5点

このような時代に発信が容易で、温泉地としての個性が出しやすいのが、ガストロノミーツーリズムである。国連機関UNWTOは、ガストロノミーツーリズムの優位性として次の5点をあげている。

①地域の特色を生かすことが容易で他地域との差別化が可能である

②観光客に新たな価値観や体験を与えられる

③観光資源が未開発な地域でも取り組める

④旅行内容の紹介が容易でストーリーを語りやすい

⑤地域のブランド力を高め裁縫意識をもたらすことができる

まさにここに着眼したのが、ONSEN・ガストロノミーウォーキングである。「温泉旅館」ではなく「温泉地」として食や歴史、景観とともにストーリーとして発信する。ハードも二次交通もいらない即効性のある取り組みである。

次回は、食と酒の世界へのアピールについて話したい。

寄稿者 小川正人(おがわ・まさと) (一社)ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構理事長

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