ホテルニューアワジ、サービス日本一に コロナ禍超えて社員一丸、女将が誇る「チーム力の成果」

「JTBサービス最優秀旅館」に輝き、喜ぶ社員たち=ホテルニューアワジ

 洲本温泉(兵庫県洲本市小路谷)の宿泊施設「ホテルニューアワジ」が、旅行大手JTBが利用者アンケートを基に選定する「2023サービス最優秀旅館」に輝いた。全国に数多くある宿泊施設の頂点に立つ快挙。木下圭子女将(77)は「淡路島の総合力が評価された。泊まっていただいたお客さまと、ホテルを支えてきた社員たちのおかげ」と感謝を口にする。(内田世紀)

■JTBが利用者アンケート基に選定

 JTB(旧日本交通公社)が1979年から続ける表彰制度で、JTB協定旅館ホテル連盟に加盟する約3600施設が対象。大規模施設の旅館とホテル、中規模施設、小規模施設の4部門があり、宿泊者から回収したアンケートを基に採点が行われる。

 ニューアワジは2年前、優秀賞を受け、一歩及ばなかった。今回は大規模旅館の部で2022年度のアンケート結果の評価が高かった。採点は接客サービスや食事などの項目があり、100点満点中91点を獲得。念願の最優秀に選ばれた。

■コロナ3年目の繁忙、社員一丸

 1953年、洲本港近くの商人宿「水月荘」として創業。61年に洲本温泉に移転し、65年にホテルニューアワジと改称した。

 木下女将とJTBの縁はその頃から続く。「高校から帰って、交通公社三宮支店にご用聞きの電話をかけるのが私の仕事だった」。オープンしたばかりで、ほとんど紹介してもらえなかったが、サービスを磨くうち少しずつ手配が増えた。

 「ある日、たまたま10組ほどの予約を頂いた。両親が喜ぶと思ったら涙があふれて、言葉に詰まって」

 「あなた娘さん? いくつなの」。受話器の向こうから担当者のいら立った声が聞こえた。「高校生です」と声を絞り出した。

 「それからです。紹介数がどんと増えたのは」と懐かしむ。

 「受賞は新型コロナ禍の影響が大きい」と話す。感染拡大が3年目に入った22年は「誰もが旅行に飢えていた」と振り返る。

 近畿圏の近場に車で移動し、人と接することなく旅行を楽しめる環境が評判となり、予約が途切れることはなかった。「絶対にサービスの質を下げてはいけない。お客さまは、生きるため、元気になるためにここに来るのだから」。社員一丸となって宿泊客をもてなした。

■女将「社員の幸せ一番に」

 今年6月上旬、東京であった表彰式には「ホテルに人生を賭けてくれた社員と喜びを分かち合いたい」と名誉支配人夫婦、現総支配人の4人で出席した。

 あいさつに立った木下女将は「これまでお客さまのことばかり考えていた。今日からは社員の幸せを一番に考えたい」と宣言。「日本一はチーム力の成果。こんなにすごい社員たちを誇りに思う」と目を細めた。

 同下旬、ホテル内の大広間で、客室係や調理人、清掃担当者ら約100人を集めて報告会を開いた。

 木下女将は「私もおめでとうと言われるが、私から皆さんにおめでとうと言いたい」と表彰状や盾を社員に手渡し、記念写真を撮った。松田光人総支配人は「一流の格付けが与えられる85点を取ってから20年以上がかかった。ほとんどの項目で満点を付けてもらわないと91点は取れない」。

 「農漁業など観光業界を支える裾野は広い。ニューアワジだけで取った賞ではない」と木下女将。「ここからが大変。お客さまは日本一のサービスを期待して泊まりに来る。さらに上のサービスを提供しないと満足してもらえない」と気を引き締めた。

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