いつもスタジアムの中心に彼がいた。その名はアンドレス・イニエスタ。
柔らかなボールタッチと正確なパスから「魔法使い」とも称される。その司令塔が1日のサッカーJ1札幌戦を最後に、5年間所属したヴィッセル神戸を退団した。
今季公式戦初先発となった札幌戦。この日一番の見せ場は前半に訪れた。味方とのパス交換から相手陣内に切り込み、右足を鋭く振り抜く。ゴールこそならなかったが、華麗で力強いプレーはチームを鼓舞した。
ピッチでのラストダンスは57分間。後半途中、惜しみない拍手に包まれ、背番号8は別れを告げた。
試合後には退団セレモニーがあり、チームメートとサポーターが主将を盛大に送り出した。
去り際の一瞬、光がその勇姿を照らした。最後まで惜別と感謝の思いを示す光景はあまりに美しく、偉大なプレーヤーであり続ける理由を垣間見た気がした。(中西幸大)