メルセデス代表、ハミルトンの無線に介入したのは「事態を落ち着かせる」ためだったと説明/F1第10戦

 メルセデスF1のチーム代表であるトト・ウォルフは、F1第10戦オーストリアGPでチームの無線に割って入ったが、これは滅多に行わないことで、苦戦するルイス・ハミルトンがいら立ちを口にするなか事態を落ち着かせようとしたものだった。

 ハミルトンとチームメイトのジョージ・ラッセルは、予選の段階で順位に多少の開きがあった。ハミルトンは5番グリッド、ラッセルは11番グリッドからのスタートとなった。ラッセルは71周のレースを走るなかでチームメイトに追いつき、最後はハミルトンが7番手、ラッセルは8番手でチェッカーフラッグを受けた。

 しかしハミルトンは、トラックリミット違反でレース後にペナルティを受けた8人のドライバーに含まれており、レース結果確定後の最終順位は8位に落ち、ラッセルが7位となった。トラックリミット違反についてはレース中にハミルトンがたびたび不満を口にし、ライバル勢がこの違反を犯していると無線で非難してはばからなかった。だがハミルトン自身もトラックリミット違反でタイムペナルティを科された。

 レース中、担当レースエンジニアのピーター・ボニントンは、コースの境界線にあまり接近せずに走ることを求めた。するとハミルトンは「コースに留めておけない。このマシンは曲がらなすぎる!」と皮肉を口にした。

 ドライバーが平静を失っていると判断したウォルフは、無線に介入して、ドライビングに集中するよう2度もハミルトンを促した。2回目の介入の際にウォルフは、「ルイス、マシンがよくないのは分かっている。それでも、ドライブしてくれないか」と言った。

 レース後、ウォルフは無線を通じたレース中の叱責について釈明した。

「彼とは電話し、顔も合わせているところを見てほしい。あれはなんでもないことだ」と、ウォルフは大げさなことではなかったと語った。

「苦しい週末だった。チーム全員にとってだ。だがこうしたことを経験してチームは強くなる」

「ドライバーやチームを第一に考えた末のことだ。時として、あのように事態を落ち着かせるべき瞬間がやってくる。良かれと思ってしていることだ」

「トラックリミットについてはたくさん議論した。強制力があったのかどうかといったことだ」

「パッケージが期待通りの性能を発揮しないなかで、最大限の成果を引き出したかった。できることはすべてしたかった」

2023年F1第10戦オーストリアGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

 メルセデスは最近アップグレードを投入したばかりであり、カナダGPでは比較的いい結果を残すことができた。しかし先週末については、メルセデスのW14にはまったくペースがなかったとウォルフは認めた。

「悔しい思いをした日だ。マシンを速くすることができなかった。金曜日以降、数十分の一秒かもう少し、タイムが不足しているのがわかっていた」

「この成績の振り幅は非常に興味深いと感じている。ある週末は我々がレッドブルへの第一の挑戦者となり、次はフェラーリ、そしてアストンマーティンへと移ってきた。今回、我々はそうした勢力のなかで後方となってしまった」

「こちらの予想としては、モントリオールは理想的ではないと思っていたが、驚くほどいい成績だった。オーストリアでは、W14の高速性能が低速コーナーでの不利を補うだろうと考えていたが、まったくそのようにはならなかった。マシンが適切な状態になることは一度もなかった。アンダーステアからオーバーステアまで、あらゆる症状に悩まされた。まったくいいところがなかった」

2023年F1第10戦オーストリアGP トト・ウォルフ代表(メルセデス)

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