「らんまん」牧野と熊楠の交流 南紀白浜の記念館で特別展、植物標本や書簡など

南方熊楠が牧野富太郎へ送った植物標本のパネルなど65点を展示している(和歌山県白浜町で)

 世界的な博物学者・南方熊楠(1867~1941)とNHK連続テレビ小説「らんまん」のモデルとなった植物学者・牧野富太郎(1862~1957)の関係に迫る特別展「南方熊楠と牧野富太郎―ふたりの事ども」が、和歌山県白浜町の南方熊楠記念館で開かれている。熊楠が牧野へ送った植物標本のパネルや書簡、写真など65点の資料を展示している。10月9日まで。

 記念館によると、日本の植物学黎明(れいめい)期に活躍した熊楠と牧野の2人は互いに意識はしていたが、生涯直接会うことはなかった。2人をつなげた人物は、上富田町出身の植物・魚類研究者、宇井縫蔵(1878~1946)。熊楠は、宇井の仲介でキノクニスゲ、エビネなど400点以上の植物標本を牧野へ送った。

 2人とも、幼少期身体が弱かった▽実家の家業が酒造業▽経済感覚に疎い▽昭和天皇への御進講、後に御製(和歌)に名前が入る▽といった共通点がある。

 一方、牧野は酒を飲めないが、熊楠は大量に飲む、牧野は東京大学の講師として長年勤務したが、熊楠は東京大学を退学しアメリカに留学したといった相違点がある。

 同館は「現代に強烈なエピソードを残す2人の交流を知ってもらいたい。熊楠が牧野へ送った植物標本は約120年前の和歌山県の自然を示す貴重な資料。この展示を機に自然環境への注目を深めてもらいたい」と話している。

 なお、8月1~28日には、熊楠が採集し、牧野へ送ったキノクニスゲ、リュビンタイなどの植物標本の実物を展示する。

■シンポジウムやトーク

 9月10日午後1時~3時には同館多目的室で、特別展シンポジウム「南方熊楠と牧野富太郎 二人の植物学」を開く。練馬区立牧野記念庭園学芸員の田中純子さんが「牧野富太郎 結網に見る人生」、成城大学非常勤講師の田村義也さんが「知の近世と近代:牧野富太郎と南方熊楠」をテーマに話す。定員35人。参加には予約が必要。

 また、7月16日、8月13日、9月17日、10月8日のの午後2時から、記念館の三村宜敬学芸員によるギャラリートークがある(約20分)。参加申し込みは不要。

 開館時間は午前9時~午後5時。入館料は600円(小中学生300円、幼児無料)。

 問い合わせは、記念館(0739.42.2872)へ。

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