響け声援、球場中に…高校野球4年ぶりの「声出し」解禁 熊谷高応援団「野球応援は応援団の存在証明の場」

屋上で本番に向けて練習に励む熊谷高校応援団団長の小和瀬智史さんら=6月30日午後、埼玉県熊谷市大原の県立熊谷高校

 第105回全国高校野球選手権記念埼玉大会が8日開幕する。昨年は大声での応援を禁止していたが、今大会は吹奏楽、声出しなど、新型コロナウイルスの影響で制限されていた応援が、4年ぶりに解禁となる。県内の高校応援団にとっても待ちわびた夏。「高校野球の応援は存在証明の場」と本番に向けて練習にも熱がこもる。

 「クマコウ! クマコウ!」。6月下旬、熊谷市大原の県立熊谷高校。屋上で同校応援団が高校野球の応援に向けて練習を行っていた。小雨が降る中だったが、応援団の団員たちは手拍子などを全力で実施。本番さながらの熱気で、緊張感も漂っていた。

 コロナ禍で2021年の埼玉大会は1、2回戦は野球部と学校関係者のみ球場入り、3回戦以降は有料有観客試合に。太鼓1台の使用は認められたが、楽器、メガホン、エアスティックの使用は禁止。昨年は大声での応援が禁止だった。3年生で副団長の関谷好真さん(17)は「今までは規制も多かったので、今年は自分たちらしい応援をしたい」と意気込む。

 応援団は旧制熊谷中学時代からの伝統を誇り、現在の団員は3年生6人と1年生4人の計10人。平日は月、水、金曜に2時間の練習を実施する。メニューは自分たちで考え、時折OBの指導も受けながら汗を流す。いずれも1年生の尾畑賢梧さん(15)と市野瀬聖さん(16)が「上下関係は厳しい」と話す通り、厳しい規律も維持されている。

 3年生で74代団長の小和瀬智史さん(18)は小学校の時に応援団を見て憧れを抱いた。中学校時代には模試で合格率は10%と判定されていたが、猛勉強して進学校の同校に合格し、応援団の一員に。入ってみると、独特のルールやしきたりがあり、やるべき仕事も多く、観客としては見えなかった大変さを肌で感じた。

 今年5月には東京六大学野球の春季リーグ戦で、早稲田大学対慶応大学の早慶戦を観戦。声出しの応援が解禁され、観客が一体となって応援歌を歌い、球場全体を盛り上げた。「年齢や性別も関係なく、一緒に肩を組んで応援していた」と振り返る。

 6月に熊谷スポーツ文化公園西グラウンドで行われたラグビー国体予選は応援の規制がなくなり、声援を受けて勢いに乗った同校は決勝で本庄第一を下し、25年ぶりの栄冠を手にした。「応援のたびに熱を帯びていく感じだった。疲れは全く感じず、ただただ楽しかった」と小和瀬さん。

 同校は9日に熊谷さくら運動公園野球場で行われる1回戦の第1試合で、大宮光陵高校と対戦予定。小和瀬さんは「野球応援は応援団の存在証明の場。熊高生をしっかり盛り上げて、熊高の応援はこんなにすごいのかと思ってもらえるようにしたい」と話した。

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