豪雨の農林水産被害130億円 紀伊半島大水害以降で最大規模、和歌山

6月の豪雨による和歌山県内農林水産業被害額

 和歌山県は4日、6月2日の豪雨による県内の農林水産業被害額が、130億6600万円(100万円未満四捨五入)で確定したと発表した。第2報(6月14日時点)より58億1600万円多く、2011年の紀伊半島大水害より後では最大規模となった。

 県によると、紀伊半島大水害の農林水産業被害は約417億円。これより後では18年の台風21号の約64億円が最も大きかったが、今回はそれを上回った。

 今回は、雨で農地が崩れたことにより、かんきつや柿、梅などの樹木、モノレール、スプリンクラーなどが流される被害が大きかった。また、平野部では水稲や野菜などが冠水した影響が目立った。被害地域は紀北や紀中が主だった。

 農地は2437カ所で、のり面が崩れるなどして被害額は43億2800万円。

 農作物関係で被害が目立ったのはかんきつで、計15.9ヘクタールで樹木が流失、16億5500万円の被害が出た。

 農業用施設では、水路810カ所が壊れ16億6200万円、道路453カ所で路肩が崩れるなどして18億4千万円。

 林業関係では、山腹崩壊や渓流荒廃が27カ所あり9億2500万円、林道が437カ所で壊れ6億8400万円などだった。

■災害救助法 適用基準見直しを  岸本知事、国に要請へ

 豪雨災害では、紀北の複数の市町で大きな被害があったが、県が災害救助法を適用できたのは海南市だけだった。岸本周平知事は4日の定例記者会見で、被害を受けた市町村に公平に適用できるよう、基準の見直しを国に求めていく考えを示した。

 海南市では1200戸を超える住宅で床上・床下浸水があった。人口規模に対する被害戸数が基準を満たしたため、県は同市に対し、避難所の設置費用や住宅の応急修理費用などを国や県が負担できる災害救助法を適用した。ただ、被害があった他の市町は基準に合わず、適用できなかった。

 岸本知事は「基準には合理的でない部分がある。県議会と連携し、国に対し、古い基準の見直しを求めていく」とした。

 国は和歌山県を含む今回の豪雨被害を「激甚災害」に指定する見込みで、県内の農地復旧費用などに対する国からの補助率がかさ上げされる。岸本知事は「これで市町も県も動きやすくなる。最大限の努力をして復旧復興に力を入れたい」と話した。

■発生時の対応検証 線状降水帯

 岸本知事は、豪雨の際に発生した線状降水帯について「怖さを痛感した。発生した時にどのような対応を取るべきか検証していく」と話した。

 また、今回の災害発生時、初めての試みとして、気象台や通信会社、電力会社、鉄道会社などと、インターネット回線を常時つないで情報交換する仕組みを採用したと明らかにした。

 これについては円滑に進められた一方で、被害状況の把握が難しかったという。このことから、今後どのように被害状況を即時に収集して関係者で共有し、対策につなげられるかについて検討していくとした。

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