「悪について何度も考えた」要潤 ライダー俳優を飛躍させた19年前の映画

「後悔するぞ。何の身分もない、何の保証もない、小学校も出とらん虫けらが何を言っても無駄だ! お前は私にすがるしかない!」

朝ドラ『らんまん』(NHK総合)で、植物学の教授・田邊役として出演している要潤(42)。7月5日の放送では、神木隆之介(30)演じる主人公の万太郎に激高して冒頭のセリフを言い放ち、視聴者を驚かせた。

6月25日に終了した日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』(TBS系)でも悪人を演じた要。いまや“令和の名悪役”とも呼ばれているが、もともとは正義のヒーローを演じていた。

要は20歳のときに『仮面ライダーアギト』の仮面ライダーG3役でデビュー。イケメンヒーローとして注目を浴びると、その後はさまざまな映画やドラマに出演し、活躍していく。

そんな要の悪役としての原点ともいえる作品が19年前の映画『CASSHERN』(’04年公開)だという。同作は、テレビアニメ『新造人間キャシャーン』を原作とする実写映画で、紀里谷和明氏が監督を務めた。主題歌を紀里谷監督の妻だった宇多田ヒカル(40)が担当したことでも話題となった。

当時、要はデビュー3年目で、キャシャーンと対立する軍団の一員で新造人間のバラシン役に抜擢された。WEBメディアのインタビューによると、要は撮影前から紀里谷監督と相談し、悪役を作り上げていったという。

《“悪”というキャラクターについて、自分なりに考えました。監督とコミュニケーションを取る場が撮影前に何度も設けられたのですが、そこでも“悪”について、バラシンの中にある“悪”について話し合いました。

“悪”なんですけれど、悲痛な叫びを持つ“悪”であり、自分が今までしてきたことを十分把握している“悪”なんです。自分の行動に間違いはないと思っているだろうし。でも、恋人が死んで彼の中で何かが少し変わり、自分が死ぬ時に全てが見える。要するに、成長していくキャラクターでもあるんです。僕自身、成長していく人間は純粋な心の持ち主なんじゃないかと思っているのですが、そういう意味ではバラシンも純粋な男ですよね》

自分が演じるキャラクターをここまで徹底的に分析した経験を経て、要は確かな手応えを感じたという。

《俳優としての自分のステップアップになった作品であることは間違いないです》

正統派イケメン俳優としてデビューしながら、現在は名悪役としても活躍する要。一つの役でも決して手を抜かず、悪役の悲哀すら徹底的に掘り下げる。そんな芝居への「純粋」さゆえに、現在も俳優として成長し続けられているのかもしれない。

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