馬毛島自衛隊基地工事で作業員が増えたからか…種子島でコロナ、インフルが流行 医療資源乏しく不安高まる

自衛隊基地建設が始まった馬毛島。画面奥は種子島本島=西之表市の馬毛島(本社チャーター機から撮影)

 鹿児島県の種子島で6月以降、新型コロナウイルスとインフルエンザが流行している。病院は発熱を訴える外来患者で混雑、学級閉鎖も発生した。西之表市馬毛島では、自衛隊基地整備が進み工事関係者の流入が続く。離島の医療資源は乏しいだけに、さらなる感染拡大への不安が高まる。医療関係者は「手洗いや会食は少人数にするなど、感染防止対策を改めて徹底してほしい」と呼びかけている。

 南種子町の公立種子島病院には連日、ドライブスルー式の検査に訪れる車が相次いでいる。特に土日は多く、看護師が休日出勤することも。6月26日からの1週間にコロナ陽性者81人を確認。40、50代が多いという。

 県が6月30日に発表した感染症情報(19~25日分)によると、県内の1定点医療機関当たりの平均がコロナ11.71人、インフル18.09人のところ、西之表保健所管内はコロナ61.0人、インフル40.0人。同保健所は26日、インフルの流行発生警報を発令した。

 学級閉鎖は西之表市の小中学校で累計4クラス。市や南種子町は防災無線で感染症予防を呼びかけた。

 島内の医療機関の関係者は「最近は島民以外の工事関係者の受診が目立っている」と指摘。一方、以前の流行期に比べ高齢者の受診が少ないという。「人が増えても島の医療態勢は、ほぼ変わらない。島民に医療が届きにくくなるのではないか」と心配する。

 同市の種子島医療センターは5月以降、一日の外来患者が50~100人ほど増え、診察の待ち時間は長くなっている。高尾尊身院長(74)は「現時点で病床の逼迫(ひっぱく)はないが、これが続くと今後影響が出る恐れがある」と混雑緩和への対策を検討中だ。

 島内1市2町の人口は約2万7000人。市によると、種子島に来島する工事関係者は2月以降増え続け、6月5日時点で1050人。秋にかけて急増し、ピークの24年2月は種子島に約2000人、馬毛島に約4000人が見込まれている。

 市内の40代パート従業員女性は「作業員の増加が感染拡大時と重なったら、離島の医療態勢で受け入れきれるのか」と不安を口にする。

 島内のある特別養護老人ホームでは職員が定期的に抗原検査をし、家族が感染したら出勤停止にするなど策を講じる。職員は「基礎疾患がある高齢者は感染が命に関わる。行政が強く緊急性を発信してくれれば、住民も配慮してくれるはず」と求めた。

ドライブスルー方式の感染症検査で患者の検体を採取する看護師=4日、南種子町の公立種子島病院
ドライブスルー方式の感染症検査会場で患者の検体を調べる看護師=4日、南種子町の公立種子島病院

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