取締役会に求められるダイバーシティ

6月、政府は男女共同参画会議で、『女性活躍・男女共同参画の重点方針2023(女性版骨太の方針2023)』の原案を発表しました。そこでは、プライム市場に上場する企業の女性役員の比率を2030年までに30%以上にするという目標が掲げられています。

2022年7月時点では、プライム市場の上場企業のうち、女性役員がゼロの企業は18.7%、目標としている30%を超える企業は2.2%にとどまっています。まずは、2025年を目途に女性役員を最低一人登用するよう促し、目標を達成するための行動計画をつくるよう推奨しています。

昨年2022年7月5日付のESGニュース『多様性と企業価値』では、国内の機関投資家が女性取締役がいない投資先企業に対し、取締役選任案などの総会議案に反対することを議決権行使基準に盛り込む動きが広がっていることを紹介しました。その中で、2023年2月から、アメリカの議決権行使助言会社がその方針や基準に取締役会の多様性を重視する基準や方針の導入、厳格化に取り組む予定であると述べました。

実際に、グラスルイス(Glass Lewis)は、2023年2月以降に開催される株主総会から、プライム市場の上場企業については少なくとも10%以上の性別の多様性がない取締役会の場合、取締役会議長または指名委員会委員長に対して反対助言を行うことを、『2023年助言方針改定』に盛り込みました。

同社は、上記基準を満たさない場合でも、ダイバーシティ促進に関する開示情報の中で十分な説明や改善計画などが確認できれば、反対助言を控えることもあるとしていますが、2024年2月以降に開催される株主総会からは、この例外条項もなくすとしており、さらに厳格化される見込みです。

このような状況の中、6月に株主総会を開く企業で株主から提案を受けたのは82社で、過去最多となったと報道されています。

女性の活躍推進をはじめダイバーシティへの取り組みは、これまでESGの取り組みの一つとして注目されてきました。そして、ESG投資の対象として評価され、企業も女性活躍を推進している企業を認定する『えるぼし』や子育て支援に積極的な企業を認定する『くるみん』など、行政からの評価を受けようと努めてきました。

しかし、昨今はより厳しい条件で上場維持、企業存続のための必須条件となってきています。持続可能な取締役会にはダイバーシティが必須であり、それは企業の持続可能性と競争力につながると評価されるのです。

今後は、個人投資家としてもさらにESGの知識を深めることが、必要になってきていると言えるのではないでしょうか。そのため、ESGに特化して調査・評価した企業群に投資する投資信託への注目が、高まると見られます。

                                           リサーチチーム

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