【「アラクオ」リレーインタビュー第2回】「自分のために生きる」、25歳という多感な時期で松岡広大に訪れた“大きな変化”とは

EXILE/FANTASTICSの佐藤大樹さんが地上波連続ドラマ単独初主演を務める新ドラマ「around1/4(アラウンドクォーター)」(ABCテレビ・テレビ朝日ほか)。かつてのアルバイト仲間だった新田康祐(佐藤)、平田早苗(美山加恋)、橋本明日美(工藤遥)、横山直己(松岡広大)、宮下一真(曽田陵介)ら5人が、アラサー前の25歳=アラクオを迎える中、それぞれが直面する“25歳の壁”、そして“恋の分岐点”にフォーカスを当て、人生と恋に悩み傷つき過ちを繰り返しながらも自分なりの乗り越え方を見つけていく姿を、等身大のキャラクターとリアルなセリフとともにみずみずしく描いていく。

TVガイドWebでは、クランクイン前に敢行したドラマ「アラクオ」(「around1/4(アラウンドクォーター)」)を彩るメインキャスト5人のリレーインタビュー公開中。第2回は、ミステリアスな雰囲気をまとい、サパークラブ(男性がカウンター越しに接客するナイトクラブ)で働きながら、実はある“惑い”を抱える横山直己を演じる松岡広大さんが登場。昨年10月に放送された「壁こじ」こと「壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている」(ABCテレビ)以来の連続ドラマ出演となる松岡さんだが、この「アラクオ」の現場には特別な安心感があるという。

――「壁こじ」以来、久しぶりの地上波の連ドラ出演になりますね。

「久しぶりですね。なので、呼んでいただいたこともそうですし、監督も一度ご一緒したことがある隈本遼平さんで、プロデューサーの方もABCテレビさんも『壁こじ』でお世話になっていた方たちばかりなので、一期一会というものが縁を回っているのを感じます。一緒に戦ってきた仲間がいるのは、本当に心強いなと思います」

――心強さがあると、撮影に対する期待も大きくなるのではないでしょうか?

「いやいや、期待と重圧のはざまで戦うのがわれわれですから(笑)。特に、『壁こじ』といった原作があるものというのは、原作の愛というものをどれだけ自分が深めて深化できるかというのがすごく大事で。台本と原作を読み込むということしかできないので、最大限の敬意を払って、一瞬を切り取るべく演じていこうと思っています」

――around1/4」にはどんな印象を持たれましたか?

「僕も今年の夏には26歳になるので、何から何まで理解できるということはないのですが、断片的に自分と同じような傷があるというか。自分たちのことを語っているような、後方に退かずに近くに感じられるものがあります。女性は女性、男性は男性という単純な性の違いよりは、性差で片付けるのではなく『これはどちらとも当てはまるよね』という同一性みたいなものがあるので、そこは分け隔てなく理解されて共感性も高いのかなと思います」

――作は25歳前後の男女の「子どもじゃないけど大人になりきれない」というストーリーですが、展開についてはどのように感じましたか?

「25歳って、後輩もまあまあできてくるし、ある程度いろいろなものに対してアンチテーゼもあって、自分なりのやり方も見つかってきている。でもそれは未成熟で、言ってしまえばまだまだ青二才だと思うんです(笑)。でも、その揺らぎがある時はやっぱり一番の変化の時だとも思えて。『痛みなくして得るものなし』というのはそういうことだと思います。環境、ポジション、立ち位置も変わるだろうし、転職みたいなことを考えたりするのってここら辺なのかなと。だから、25歳はいろいろなものが見えすぎている、高校生の時よりも多感な気がします」

――松岡さんは今まさに“アラクオ”を迎えていますが、学生の時に思い描いていた25歳と今思う25歳で印象の変化はありましたか?

「かなり乖離(かいり)しています。中学生の時に高校1年生を見たら、すごく大人に見えるじゃないですか。あれと同じ現象が起きていて、高校生の時に見た25歳ってものすごく大人に見えて、なんなら僕は背広を着てカチッとしているイメージだったんです。一人前として、自分でちゃんと地歩を固めて生きている人だと思っていたのですが、全然そんなことはないですね(笑)。周りに下駄を履かせてもらっているのが25歳の感覚だなと思います」

――ドラマに通ずる部分もありそうですね。そんな中で、今回演じられる直己という役についてはどのように感じているか教えてください。

「思い描いていた理想と現実のギャップを受け入れられない人だなと思いました。自分がいつも『これはこうだからやらない』『これはやってみよう』と、変にずる賢くなっちゃうんです。直己はまさにそれだと思っていて。プライドも高い、自分からは発信しないけど相手から横やりを入れられると過剰に反応する、それはあまりにも自尊心が高すぎるからであって、直己はかなり繊細な人だと思います」

――かなり癖の強い人物ですが、共感できるところなどはあるのでしょうか?

「随分前に、僕もプライドが高すぎたところはあったんです。向こう見ずで話を聞かないで、自分の意思ははっきりしているけど、『これはこうだと思うよ』と違う案を出された時ですら、僕は否定の意見だと思ってしまって。アドバイスって、少し否定から入ると思うんです」

――言い方によっては…確かに分かる気がします。

「そこからの二つの効果があって、否定を言われて自分で内省して新しいものを生み出す、もう一つは、否定を言われて自分の論理をもう一度確かめた時に、自分の論理の正しさをより強固なものにしようとする。だから、アドバイスというものの我が強くなるんです。部分的に受け入れるところだけ受け入れて右から左に流せるといいのですが、やっぱり全部聞いてしまうんですよね。そこは(直己と)似ています」

――先ほど「プライドが高すぎた」というお話もありましたが、昔は抱えていたプライドの高さが今はなくなったきっかけはあったのでしょうか?

「自分のために生きようと思いました。それまではイエスマンだったのですが、『嫌なものは嫌』『やりたいものはやる』と、イエスかノーかはっきりすることって大事だと思って。なので、自分が何に興味があるのかというのをちゃんと探すようになって、イエスかノーかをハッキリと言うようになりました。その代わり、ちゃんと言葉遣いや発言には責任を持って、自分でちゃんと処理をする。そこで、忖度(そんたく)ではなく
斟酌(しんしゃく)だと、僕は思いますね」

――主張という点では、本作でも5人それぞれの主張がかなり入り組んでいるのかなと思います。最後に注目ポイントを教えてください。

「僕が映像でも演劇でもどちらでも大事にしているものがあって。自由に見ることができる余白を与えられるかが大事だと思っているんです。俳優が提示したいものを提示したとして、それだけに固執してしまうのではなく、まずは余白を作った上で、いろいろな想像をしてもらう。『私もこういうことあったな』と共感に寄るのか、『それはないよ』と怒ることでもいいんです。いろいろな人がいていい。その余白を残してあげることがこの作品ではできると思います」

インタビューでは対話を楽しむように時間ギリギリまで自分の思いを語ってくれた松岡さん。話を聞いていると、その魅力的な話には自然と引き込まれるものがあり、それは松岡さんが演じる直己という役にもつながっているのではないかと感じた。「インタビューって1時間は必要だと思うんです」と語っていた松岡さんがどんな直己を作り上げていくのか、気になるばかりだ。

明日7月7日は橋本明日美を演じる工藤遥さんが登場。自分とは真逆の恋愛観を持つ明日美に対して感じていることを赤裸々に語ってくれた。

【プロフィール】

松岡広大(まつおか こうだい)
1997年8月9日生まれ。東京都出身。2015年に舞台作品ライブ・スペクタクル「NARUTO -ナルト-」にうずまきナルト役で初主演を果たし注目を集める。以降、ドラマ「兄友」(TBS系)、「壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている」(ABCテレビ)、「ムチャブリ!私が社長になるなんて」(日本テレビ系)、映画「引っ越し大名!」「いなくなれ、群青」(ともに19年)、舞台「ねじまき鳥クロニクル」(20年)などの作品に出演。ドラマ「リズム」(フジテレビ)第3話より出演が決定しているほか、9月29日公開予定の映画「沈黙の艦隊」への出演を控える。

【番組情報】

ドラマL「around1/4(アラウンドクォーター)」
テレビ朝日
7月8日スタート
土曜 深夜2:30〜3:00
ABCテレビ
7月9日スタート
土曜 午後11:55〜深夜0:25
※ABCテレビでの放送終了後、TVer、ABEMAで最新話を見逃し配信

取材・文/平川秋胡(ABCテレビ担当) 撮影/尾崎篤志 ヘアメーク/関東沙織 スタイリスト/椎名倉平

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