節水、地域挙げて 幼穂形成期「絶対量が不足」 北海道2市1町通水停止

水田の状況を確認する対馬組合長(北海道北斗市で)

北海道七飯町の北海道電力七飯発電所の設備故障に伴い、農地2000ヘクタールへの通水停止が続く中、水稲が幼穂形成期に入り、地元農家や関係機関は収量確保に向け、地域を挙げて節水に奔走している。該当する2市1町は道南屈指の水田地帯で、ブランド米「ふっくりんこ」の種子産地もある。地元の渡島平野土地改良区は、農家に協力を呼びかける。

農地への通水が止まっているのは同町と北斗、函館両市。米を作る水田は1000ヘクタールに上る。同改良区は関係機関と協力し、ポンプ25台以上を使って河川からの取水などを進め、6月末の時点で全農地への通水にこぎ着けた。

ただ、7月に入って水稲は幼穂形成期を迎え、今後は幼穂を低温から守るため、深水管理に使う水の量をどこまで確保できるかが課題。同改良区は6月末、組合員約1100人に、節水や漏水防止を呼びかける文書を発送。①水田暗渠(あんきょ)の水口などはしっかり閉じる②畦畔(けいはん)からの漏水がないか点検する――などの徹底を促す。

同町の米農家で、同改良区の河村康英理事長は「水の絶対量はまだ不足していて、北電には最大限の努力をお願いする。農家側も今できることを一人一人が積み重ね、水を管理したい」と語る。

北斗市は道内唯一の「ふっくりんこ」の種子産地。北斗市水稲採種組合は、12戸が「ふっくりんこ」などを栽培。原種2トン、採種336トンを生産し、道南への種子供給を担ってきた。

水不足に直面する中、対馬慶一組合長は「種子生産はブランド米の要と思っている。発電所の設備が復旧するまでは、節水などを徹底して全員でこの難局を乗り越えたい」と強調する。

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