特殊詐欺防止啓発へ、警察署が目をつけたのが「御城印」 狙い通り、歴史ファン通じSNSでじわり拡散 兵庫・神戸

詐欺防止に向けて御城印を作った兵庫署生活安全1課の(左から)出田繁男係長と浜大輔課長=神戸市兵庫区下沢通3

 兵庫県警兵庫署は特殊詐欺の防止に向けた御城印を作り、神戸市兵庫区内の3カ所で配っている。5月下旬に完成し、歴史ファンの中では交流サイト(SNS)でじわりと拡散。計2千枚を用意し、すでに数百枚を配布したという。同署は「御城印を通じ、特殊詐欺の危険性が身近に潜んでいる意識を共有したい」とする。(千葉翔大)

 同署生活安全1課の出田繁男係長らが企画した。出田係長は同区出身で歴史に関心があり、かつて地元にあった「兵庫城」と啓発の文言を掛け合わせた御城印の制作を思い立った。

 御城印ははがき大で、1581年に兵庫城を築城した池田恒興(つねおき)が用いた家紋「揚羽蝶紋(あげはちょうもん)」を採用。区役所にも助言をもらい、区内北部に広がる山並みを意識した緑色にした。そこに「特殊詐欺一刀両断!!」の言葉と、県警のマスコットキャラクター「こうへいくん」などをあしらう。

 出田係長らの狙いは的中。ツイッターの県警公式アカウントで御城印の完成を発信すると、1.8万人が見た(7月1日時点)。他にも歴史ファンとみられる人が御城印を受け取ったとするつぶやきがリツイート(転載)されるなど、1枚の御城印が多くの人の目に触れる好循環が生まれた。

 同署の調べでは区内では今年5月までに21件(前年同期比11件増)、約5500万円(同2900万円増)の被害を確認している。

 同課の浜大輔課長は「ぼんやりと意識している特殊詐欺。その危険性をさらにはっきりと認識してもらう機会になれば」と話す。

 御城印は「特殊詐欺に関する話題を家族や知人ら3人以上に話すこと」を条件に無料で配る。兵庫署、区役所、兵庫津(ひょうごのつ)ミュージアムに加え、啓発キャンペーンでも手渡す。なくなり次第、追加の制作を検討するという。

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