神戸牛の素牛で知られる「但馬牛」の飼育システム 兵庫初の「世界農業遺産」に認定

スキー場のゲレンデに放牧されて雑草を食べる但馬牛=2022年6月、兵庫県香美町村岡区大笹

 国連食糧農業機関(FAO)は6日、兵庫県美方郡(香美町、新温泉町)の但馬牛(うし)飼育システムを「世界農業遺産」に認定した。同県内での認定は初めて。両町では100年以上にわたって血統管理に取り組んでいる。さらに草原への放牧を通じて農村環境を保全するとともに、牛ふん堆肥を田畑に還元する循環型システムを守り続けている。

 世界農業遺産は、社会や環境の変化に適応しながら、独自性のある伝統的な農林水産業や優れた景観、生物多様性などを長年にわたって継承してきた地域を認定する。農産物のブランド化や観光客誘致などにメリットがあるとされ、認定後は遺産の保全や地域活性化の推進が求められる。

 但馬牛は神戸ビーフや松阪牛の素牛(もとうし)として知られ、美方郡で古くから生産されている。日本初の牛の血統登録「牛籍簿」を整備し和牛改良の先駆けとなった。

 香美、新温泉両町やJAたじまなどは2018年2月、世界農業遺産と日本農業遺産の認定を目指して推進協議会を設立。19年2月に日本農業遺産に選ばれた。農林水産省が同年10月、世界農業遺産認定をFAOに申請していた。

 兵庫県の斎藤元彦知事は「但馬牛の伝統が世界的な評価を得られたことをうれしく思う。持続可能な農村のモデルとして広く発信されることを期待している」とコメント。今年6月下旬にFAOの調査団が訪れた上田畜産(香美町小代区)の上田伸也代表取締役(52)は「先人たちが守り続けてきた血統維持などの取り組みが世界に評価され、誇らしい気持ち。より多くの人に但馬牛の素晴らしさを知ってもらうきっかけになる」と喜んでいた。

 同時に認定された埼玉県武蔵野地域の「武蔵野の落ち葉堆肥農法」と合わせ国内の世界農業遺産は15地域に。世界では日本を含め24カ国77地域が認定されている。(三宅晃貴、長谷部崇)

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