病院経営、電気代ずしり 金大附属は負担2倍に 機器電源切れず、価格転嫁は不可

電気代の高騰が経営を圧迫している金大附属病院=金沢市内

 電気代の高騰が石川県内の医療機関に重くのしかかっている。電源を付けっぱなしにしなければならない医療機器を多く抱えていることから節電が難しく、医療費の価格は国が決めるため一般企業のように価格転嫁もできない。夏本番を迎え、さらなる負担増が予想される中、大学病院では機器や設備の更新を先送りするなどして急場をしのぐ動きもみられる。

 1日当たりの外来患者数が1500人を超える金大附属病院は、今年度の電気代の総額を約6億4500万円と見込む。新型コロナ流行前の2019年度は約3億3400万円で、4年間で2倍近くに膨らんだ。ガス代も上昇しており、光熱費全体では10億円を超える可能性もある。

 同病院には、多くの電力を消費するMRI(磁気共鳴画像装置)が4台、CT(コンピューター断層撮影)が5台それぞれ設置されている。こうした高度な検査機器は、本体はもちろん、情報処理のためのサーバーを冷やしておく必要もあり、電源をオフにすることはできない。

  ●節電も限定的

 病院側は国や県の制度を活用して省エネ対策を進めているものの、効果は限定的だ。多くの電力を必要とする医療機器はもちろん、空調の設定温度でさえ「患者の体調への影響を考慮すると、上げたり下げたりできない」(担当者)という。

 一方、医療機関の収入となる診療報酬は厚生労働相の諮問機関で議論されることから、電気代の負担を患者に転嫁することはできない。このため、値上がり分のほとんどを病院で吸収せざるを得ず、資材などの値上がりもあって利益が大幅に削られている状況だ。

 金大附属病院は毎年、企業の経常利益に当たる「目的積立金」を活用し、手術支援ロボや検査機器の購入資金に充てている。ただ、このままいくと今年度は目的積立金が見込めないどころか、院内では「10億円の赤字になる」との予想も出ている。

 病院は現在、敷地内で新中央診療棟を整備中だが、この新施設に導入する機器の購入費用も不足する恐れがある。このため、今年4月、「第2中央診療棟・新医療体制支援基金」を設け、個人や法人から善意を募っている。

 蒲田敏文病院長は「医療機関はみな同じような悩みを抱えている。大学病院は治療に加え、将来の医療人材を育てる大切な場所であり、何とか県民の皆さんの協力を得たい」と話した。

  ●医科大は1.7倍

 金沢医科大病院は今年5月の電気代が20年5月と比べて約1.7倍に膨らんだほか、県立中央病院でも昨年度の電気・ガス代が5億2300万円となり、19年度の3億5900万円から45%増となった。

 同病院管理局の担当者は「昨年度までは新型コロナの病床確保料を得て黒字になっていたが、コロナが5類に移行した今年度以降はどうなるか見通せない」と不安を口にした。

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