〈世界ジオ認定・変わりゆく手取川〉 桑島化石壁、V字谷連なる レーザー撮影で地表初確認

表面の草木が取り除かれた桑島化石壁のデジタル画像

  ●草木除き形状あらわ

 北國新聞社の手取川総合調査団は6日までに、1億3千万年前の地層「桑島化石壁(かせきかべ)」(白山市桑島)について、地表の詳細な形状を初めて確認した。ドローンでレーザー撮影した画像から表面を覆う草木を取り除いたところ、上部にV字形の谷が連なる地形であることが判明。全体に無数の亀裂が入っていることも分かった。世界ジオパーク「白山手取川」の代表的な構成要素である化石壁の現状を記録し、保全に役立てる。

  ●ドローンで本社調査団

 壁は立ち入りが規制されていることもあり、これまで上部の地形まで詳しく分かっていなかった。調査団の「水・土砂循環」と「地質・地理」の両グループが5月、高さ70メートル、幅150メートルの壁全体を撮影し、画像処理や分析を進めていた。

 画像を解析した結果、岩石が崩れてできたV字形の谷が壁の上部に複数確認された。中でも大きな二つの谷は、手取川の上流側が深さ40メートル、長さ60メートル以上で、下流側は深さ35メートル、長さ50メートル以上と推測される。

 地層に沿った横方向の亀裂だけでなく、壁面に対して縦方向や斜め方向にも無数の亀裂が入っていることも分かった。

 地質・地理グループの長谷川卓金大教授は、規則正しい多方向の亀裂によって「全体的に岩が崩れやすい状態になっている」と説明。壁面の左上から右下の方向の亀裂に沿って崩落があったため、V字形の谷ができたと考えられるという。

 水・土砂循環グループの柳井清治石川県立大特任教授は、不明部分が明らかになった意義を強調し、V字谷の下方部が川の浸食でなくなった可能性を指摘。「化石壁が斜面の崩れと河川の浸食の2段階で形成されたことが分かる」と語った。

  ●8月パネル展示

 調査団は撮影データを基に30分の1スケールとなる縦2.3メートル、横5メートルのパネルを製作し、8月から白山市民交流センターで展示する。解説パネルや3D動画も合わせて設置する。長谷川教授は「化石壁が化石だけでなく、大地の活動を知る何よりの教材であることを知ってもらえると思う」と話した。

 ドローン撮影は建設コンサルタント「地域みらい」(中能登町)が担い、調査には白山市が協力する。

 ★桑島化石壁 白山市桑島の手取川右岸に露出する白亜紀前期の地層で、国の天然記念物に指定されている。明治時代、ドイツの地理学者ライン博士が植物化石を採集したことをきっかけに国内で化石調査が進んだことから「日本地質学発祥の地」とされる。1986(昭和61)年には肉食恐竜の歯の化石が確認された。

ドローンによるレーザー撮影でデータを集めた=5月17日、白山市桑島

© 株式会社北國新聞社