【神奈川の部活動は今】秦野の中学軟式野球 地域移行でクラブチーム結成 8校の野球部員が所属 練習量を補完

一昨年から秦野市内の公立中学で結成した秦野アンビシャス=4月、秦野北中

 神奈川県秦野市内の公立中学の軟式野球部で結成されたクラブチーム「秦野アンビシャス」が部活動に新風を巻き起こそうとしている。2023年度から部活動の地域移行が始まった中、「部活動のクラブ化」を先駆的に実施。仕掛け人の野沢伸介監督(45)=秦野本町=は「今の部活動は悲しい現状にあるが、地域で野球を通して青少年を育てたい」と指導に情熱を注ぐ。

 4月上旬、同市立西中グラウンド。選手たちは異なる学校のユニホーム姿でキャッチボールやポジション別の練習で汗を流していた。

 今夏に3年目を迎えるクラブチームの活動は毎週日曜日にあり、市内9校のうち8校の野球部員が所属している。入部は希望制で、部員は平日と土曜日は各校で活動し、アンビシャスでは経験者と初心者が段階別に分かれて練習。指導は市内中学の野球部顧問や野球部顧問を希望する教員ら有志十数人が行っている。

 発端は、18年に策定された市の中学部活動のガイドライン。平日3回と土日で1回と定めた新基準に対し、当初は市内各校の野球部をクラブ化させて、希望者の休日の活動に当てる予定だった。一方、「中には『ガイドライン通りにやってほしい』と言う家庭もあり、人数がそろわない学校もあった」と野沢監督。教員の働き方改革など指導者側の制約も厳しく、「野球がやりたい子どもと教員も学校ではない別の立場でやっていく必要があった」と振り返る。

 20年から市内の野球部顧問や指導者同士で意見交換を重ね、市野球協会の協力も得ながら翌21年8月に市内初の軟式クラブを設立。8校25人でスタートを切った。

 昨年5月に入部した主将の深江航矢捕手(秦野南2年)は「部活が平日と土曜だけで、もっとやりたいなと思っていた。普段よりも人数が多くていろんな練習ができる」と充実の表情。部活動だけでは物足りない選手の受け皿になっている。

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