店員の発声練習は100デシベル…ラーメン「岩本屋」の舞台裏 岩本修一社長が著書「愛される会社のすごい仕組み」

著書「愛される会社のすごい仕組み」を出版した岩本修一社長=福井県福井市

 北陸3県でラーメン店「岩本屋」などを展開するカンサプ(本社福井県福井市運動公園1丁目)の岩本修一社長が、著書「愛される会社のすごい仕組み」(あさ出版)をこのほど出版した。同社が目標に掲げる「感動とサプライズを生む接客」を実現するためのルールや社内制度などを紹介。店舗運営、従業員の働きやすさ向上も含めた「仕組み」に焦点を当て、人気チェーン店の経営の裏側を明かしている。

 同社は1999年に福井市でラーメン屋台を始め、現在33店舗に拡大。社員約50人、パート・アルバイト約400人を抱え、2022年12月期売上高は過去最高の約14億円を記録した。

 同社が重視するのは、店のファンを増やすため、サプライズを含め常識の枠を超えた接客。来店客に喜ばれた出来事を従業員に報告してもらい、特に推奨する事例は毎月の店長会議などを通じて全従業員に共有している。

 接客の優れた従業員の表彰制度もつくった結果、「雨でずぶぬれの来店客に制服のTシャツを貸し、食事の間に乾燥機で服を乾かした」「客がマスクを床に落としたが、店に予備がなかったので近くのコンビニで購入し手渡した」といった事例が次々と出てくるようになった。岩本社長は「推奨事例を知れば、どこまでしていいのか分かる。徐々に接客レベルが上がってきた」と手応えを話す。

 接客ルールも細かく定めたという。例えば「5秒に1回、店内の目配りをする」。来店客の要望を先読みして対応することを目指す。来店時の出迎えや、客の見送りも可能な限り行う。

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 働く側の満足度を高める仕組みもつくった。3カ月~半年ごとに従業員にアンケートを行い、満足度を数値化するとともに不満や店舗の状況を書いてもらう。人間関係の悪化は、毎月の売り上げと店舗の環境点検の際の採点にも表れるといい、三つのデータを総合的に見て従業員との面談などを行っている。

 従業員の満足度に力を入れる裏側には、岩本社長の苦い経験がある。1店舗だけを3人の社員と運営していたとき、労働時間の長さなどを理由に1年ほどで3人同時に「辞めたい」と伝えてきた。岩本社長は「衝撃だった。店はお客さまに愛される前に、従業員に愛されないといけないと肝に銘じた」と振り返る。

 従業員同士で感謝を伝え合う「サンクスカード」導入や残業を減らすためのデジタル活用、開店前の発声練習は100デシベルを目安にするなど、つくり上げた仕組みは多岐にわたる。同社が目指すのは2033年度の売上高100億円。岩本社長は「仕組みはアップデートを続ける。フランチャイズや海外出店などいろいろなことを考えたい」と意気込む。

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