【「アラクオ」リレーインタビュー第3回】少しずつ形になってきた女優としての手応えと実感、工藤遥を奮い立たせる原動力に迫る

EXILE/FANTASTICSの佐藤大樹さんが地上波連続ドラマ単独初主演を務める新ドラマ「around1/4(アラウンドクォーター)」(ABCテレビ・テレビ朝日ほか)。かつてのアルバイト仲間だった新田康祐(佐藤)、平田早苗(美山加恋)、橋本明日美(工藤遥)、横山直己(松岡広大)、宮下一真(曽田陵介)ら5人が、アラサー前の25歳=アラクオを迎える中、それぞれが直面する“25歳の壁”、そして“恋の分岐点”にフォーカスを当て、人生と恋に悩み傷つき過ちを繰り返しながらも自分なりの乗り越え方を見つけていく姿を、等身大のキャラクターとリアルなセリフとともにみずみずしく描いていく。

TVガイドWebでは、クランクイン前に敢行したドラマ「アラクオ」(「around1/4(アラウンドクォーター)」)を彩るメインキャスト5人のリレーインタビューを公開中。第3回は、年上の彼氏とラブラブな恋愛をしているものの、早苗を合コンに誘っては新しい恋人候補を探し、さらにその彼氏も“ある事情”を抱え…と禁断の恋に惑うヒロイン・橋本明日美を演じる工藤遥さんが登場。常に新しい恋に動く明日美を「自分とは真逆の恋愛観だ」と捉える工藤さん。複雑で難しい新たな役にも恐れず挑めるのは、工藤さんを支える真っすぐな思いがあった。

――「around1/4」というタイトルを最初に聞いた時は、率直にどう感じましたか?

「『どういう意味だろう? クオーター? どういう意味の4分の1?』みたいな、いろいろ考えたのですが、私は“人生の4分の1が終わった時”という意味なのかなと思いましたね。25、6歳って、だいたいそれぐらいじゃないですか」

――人生100年時代で考えると、確かに4分の1はそのくらいになりますね。

「そうなんです! だからそういう意味なのかなと思って。タイミング的に一番経験を積んで、いろいろなノウハウが分かってきて、絶妙に自由が手に入ったり、ちょっとだけ余裕が生まれたりして、だからこそ酸いも甘いも経験して苦しい若者たちの話なのかなと勝手な認識をしています。まぁ、きっとアラクオの先ももっといろいろあるんでしょうけど(笑)、そんな年頃なのかなと思いました」

――原作を読まれたと伺いましたが、原作の印象はいかがですか?

「それぞれのキャラクターが自分の人生を必死に生きている感じがすごく面白かったですし、常にどこか楽しそうで、ワクワクしている感じが5人から伝わってきて。このまま原作の良さをピックアップして、実写として演じる上で大事にしたい部分はそこだなと私は思いました」

――その中で、今回演じられる明日美という役について感じていることを教えてください。

「彼女は5人の中でいうと、たぶん一番ピュアなんですよね。すごく純粋で、その場で思った感情を優先的にしてしまう子なんだろうなと思っています。でも逆に、一番地に足がついていない危なっかしいタイプというか、『この子、不安だな』と思うタイプではあるので、視聴者の方に嫌われないように、みんなに共感してもらえるキャラクターに作っていくのは意外と大変かもしれないなと思っています」

――原作を読んだ時に、一番“エグみ”のあるエピソードが明日美なのかなと個人的に感じました。彼女が抱えているものについてはどのように感じていますか?

「現時点で台本になっている部分は、原作よりもさらに共感してもらいやすいキャラクターになっている印象を受けました。そこをうまく監督とすり合わせながら、しっかり(役を)作っていければなと思っています。格好いいお姉さんでいようと背伸びをするかわいらしさを残しつつ、触れてはいけないところに触れてしまった、責任が取れないことをしている危うさ、大人だけど大人になりきれない未熟さみたいなものも、うまく共存できるようにできたらと思っています」

――原作では、明日美が禁断の恋に落ちた時に、ママ友に「既婚者の人を好きになってしまった」と打ち明けるシーンもありましたが、実際に工藤さんが友人から同じようなことをカミングアウトされた時は、どんな反応を見せるでしょうか…?

「止めますね。『やめましょう』と言います。私、恋愛って人生のプラスアルファだと思っているので、それが主軸になってしまうと、その人の本来の良さみたいなものがなくなってしまう気がするんです。『その子があっての恋愛で、自分があっての人生だから』という考え方なので、明日美ちゃんみたいに正さん(平岡裕太)と付き合っていくために、あそこまでのめり込んでいってしまうと、自分も見失うし、何一ついいことがない。いわゆる不倫とかって、『先の見えない恋愛をする必要があるの?』と思ってしまうんです」

――終わった後に、何も残らないむなしさだけが残るような気もします。

「そうです、そうです! 結局は結婚もできないし、もしその人と家庭を築いたとしても後味が悪い。自分もまた同じようなことをされるんだろうと不安になりそうですね。不倫をしていることが悪いと思うよりも、『めっちゃ無駄な時間過ごしてない?』という、ちょっと冷めた反応になると思います(笑)。話は聞くし、聞いてから止めるけど、『私はやめなって言ったからね』と、すごく仲のいい女友達だったとしても、そこで一つ壁ができるだろうなとは思います。恋愛面においては明日美とは真逆です」

――逆に、明日美と共通している部分はありますか?

「共通している部分で言うと、みんなといる時の『はい! 私がやります!』みたいな、ちょっとしゃかりきな感じはほぼ私みたいなところがあります(笑)。サバサバしていたり、活発な部分は近いと思いますね」

――今回はドラマタイトルに「クオーター­=4分の1」と入っていますが、工藤さんの芸能活動の中ではアイドル時代の活動が“4分の1”を占めているのかなと思います。

「あの時がなかったら今の私はないので、本当に感謝してもしきれないですよね。やっぱりいろいろなところで、『昔から見てました』と言っていただける方がいらっしゃったり、撮影現場のスタッフの方々からもそれをきっかけに声をかけていただくことも多いので、それだけ大きなグループに、大きな組織にいられたんだなと感じる瞬間が多いです」

――俳優に転身後、「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」(テレビ朝日系)など多くの作品を経てきましたが、個人での活動に手応えのようなものは感じますか?

「やっと少しずつ、こうして連ドラのメインキャストとして参加させていただく機会が増えてきて、ちょっとずつ形になってきているのかなと、ここ1年ぐらいで思えるようになりました。私、今回のように同世代の役者さんと一緒に(芝居を)やる機会が意外と少なくて。大御所の先輩方とご一緒させていただく機会が多かったんです。そういう時に、『今後が楽しみだよ』とおっしゃっていただけたり、お褒めの言葉をいただけることも多くて、それは一番うれしいですね。頑張ってよかったと思える瞬間です」

――「これからも頑張ろう」という気持ちにもなりますか?

「そうですね。あと、『またやろう』と声をかけていただけることもうれしいです。『もう1回私とやりたいって思ってくれているってことだな』と捉えられるので、もう1回会えるように頑張ろうというのが、日々の頑張れる糧になっています」

――個人での活動が増えると自由な時間も増えるかと思うのですが、一番のリフレッシュタイムを教えてください。

「3年ぐらい前にワンちゃんを飼い始めたのですが、愛犬との時間が一番のリフレッシュタイムですね! 仕事から帰ってきて、私がどれだけ疲れていようが、どんな顔をしていようが、『おかえり!』と走って迎えに来てくれるあの瞬間が一番たまらないです(笑)。その前にどれだけ構ってあげられなくても来てくれるので、本当に一番の癒やしだし、もう息子みたいな感じです(笑)。私がものすごく溺愛しているので…」

――いわゆる、親バカという…?

「(キッパリと)超親バカです、うちの子が世界で一番かわいいと思って接しているので。でも、どの飼い主さんも愛情を注いでかわいがっていると思うんです。だからこそ、現場が立て込んで忙しくなってしんどくなった時も、『私は君のご飯代を稼ぐために頑張る!』と思って現場に行くときもあります(笑)」

――今回の現場のモチベーションの一つにもなりそうですね(笑)。

「でも、この現場はずっと楽しそうだから、みんなに会えるのも楽しみですね。監督陣も本当に和気あいあいとしていて、こんなにゲラゲラ笑いながら本読みしたことがないです! 本読みってやっぱり難しいんですよ。状況や環境がなかったり、読むことが中心になってしまうからなかなか想像もしづらいので、本読みの中で画を見いだしていくって結構難しい作業なんです。でも(この現場では)めちゃくちゃ笑っているから、『監督たちの中で今見えているんだな』というのがこちらにも伝わってきてすごくやりやすいですし、楽しいです。こっちが疑問に思ったことをぶつけてもすぐに返してくださるので、すでにすごく安心してます」

――ほかのメインキャスト4人とは今日初めて顔合わせをしたと伺いました。(※取材時)

「それぞれ本当に気持ちのいいテンポ感でセリフを出してくれますし、バイト仲間という、深くも浅くもない関係性みたいなのがすごく一瞬で見えて、やっていて楽しかったですね」

――これからの撮影にも不安なく入れそうですね。

「本当に不安はないです。5人のところはもちろん、今日一緒にやらせていただいた正さんや洋一くん(吉澤要人)も、もう『なるほど』と思うぐらい関係性がスッと見えてきたので、これからがめちゃくちゃ楽しみです」

――そんないいチームで作り上げていく「アラクオ」の注目ポイントを最後に教えてください。

「この作品は、20代半ばに差し掛かって、人生のちょっとずつを経験してきたいろいろな若者たちが、仕事に恋に悩んでいく群像劇なので、もしかすると同世代の方はものすごく共感できるキャラクターが5人の中にいるかもしれません。逆に、その時期を通ってきた大人の皆さんには『あ、自分も昔はこうだったかもしれない』と懐かしんでもらえたり、明日美ちゃんのような危ないところに足を突っ込んでしまっている方も、『人のふりみてわがふり直せ』というか、『私こう見えていたんだな』と思っていただけたりと、自分が置かれている状況や通ってきた道で共感できる場所が違うと思うので、ぜひ自分が共感できるキャラクターを性別問わず見つけて楽しんでいただけたらうれしいです」

――ちなみに、5人の中で推しみたいな人はいますか?

「えー誰だろう…直己ですね。今日の松岡さんの感じを見ていても、『直己すてきだな、好きだな』と思って。みんなでいる時でもマイペースで、自分の中に流れているリズムや時間感覚を一切崩さない感じがすごくあって。そんな彼が、とある1人の男の子に惑わされていくさまを早く見たいです! 明日美ちゃんはみんなに合わせて、みんなの中で自分の居場所を見つけて生きていくのが得意なタイプだから、全く真逆の直己がどうなっていくのか、オンエアを見るのが楽しみです」

実は工藤さん、自分以外の役の恋愛部分はあまり深く読みすぎないようにしているそう。「今知りすぎると、5人で集まった時に“工藤遥としては知っていてもいいけど、橋本明日美としては知っていてはいけないこと”がぐちゃぐちゃになりそうで。あんまり深堀りしないようにはしているんです」と、ここでも作品に対するストイックな姿勢が垣間見えた。それでも、やはり展開は気になるようで「素直に一視聴者として(オンエアを)楽しみにしようと思います!」と笑顔を見せていた。

明日7月8日は平田早苗を演じる美山加恋さんが登場。本作では康祐の一言によって早苗の価値観が大きく変わっていくが、演じる美山さんにも、かつて悩んでいた時に刺さった言葉があったことを明かしてくれた。

【プロフィール】

工藤遥(くどう はるか)
1999年10月27日生まれ。2018年からは女優としての活動をスタートさせ、ドラマ「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」(テレビ朝日系)、「ロマンス暴風域」(MBS)、「ブラザー・トラップ」(TBS)や、映画「樹海村」(21年)、「逃げきれた夢」(23年)などに出演。また、「若月佑美と工藤遥のMBSヤングタウン」(MBSラジオ)にレギュラー出演中。現在、ドラマ「なれの果ての僕ら」(テレビ東京系)、映画「君は放課後インソムニア」に出演中。10月14日より出演する舞台「あの夜であえたら」が上演予定。

【番組情報】

ドラマL「around1/4(アラウンドクォーター)」
テレビ朝日
7月8日スタート
土曜 深夜2:30〜3:00
ABCテレビ
7月9日スタート
土曜 午後11:55〜深夜0:25
※ABCテレビでの放送終了後、TVer、ABEMAで最新話を見逃し配信

取材・文/平川秋胡(ABCテレビ担当) 撮影/尾崎篤志 ヘアメーク/関東沙織 スタイリスト/椎名倉平

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