BMW、チームWRTが走らせるハイパーカーのドライバーラインアップ決定は「急がない」

 2024年からWEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに参戦するチームWRTが走らせる予定となっているBMW MハイブリッドV8。このLMDhカーのドライバー選考について、BMWのモータースポーツ責任者であるアンドレアス・ルース氏は「時間を掛ける予定だ」と語った。

 来季のWECで2台のBMW MハイブリッドV8を走らせる予定のチームWRTは、既報のとおり先日モーターランド・アラゴンでのLMDhマシンを使った最初のテストを実施し、この際6人のドライバーが周回を重ねた。

 テストには、BMWのワークスドライバーであるシェルドン・ファン・デル・リンデ、ドリス・ファントール、イェッセ・クローン、マキシム・マルタンの4名に加え、週末にはBMWジュニアチームの卒業生であるマックス・ヘスとダン・ハーパーの2名も参加した。一方、ダラーラ製のプロトタイプカーを試乗したことのあるレネ・ラストは、ABB FIAフォーミュラE世界選手権への参戦のため、このテストを欠席している。

 現在IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に参戦しているアウグスト・ファーフス、フィリップ・エング、コナー・デ・フィリッピ、ニック・イェロリーと合わせると、プログラムのために評価するドライバーに不足はないとルースは語る。

「これからテストフェーズに入るので、まだ少し時間がかかるだろう」と同氏。「正直なところ、我々はドライバーを決定するのに急を要していない」

「IMSAドライバーだけにチャンスを与えるのではなく、他のドライバーにもチャンスを与えたい。BMWのドライバーラインアップは非常に優秀かつ強力であり、WECに最適なドライバーを選出することにはかなり自信があるんだ」

 すべてのシートを現在の21人のファクトリードライバーから選出するかのか、というSportcar365からの問いに対しては、ルース氏は「まだ分からない」と答えた。

「BMWには強力なドライバーラインアップがあり、これで満足できるだろう。これからテスト段階に入り、どのような結論に辿り着くのかを見ていくことになる」

「なぜなら、最終的にはWECはもちろん、IMSAのためのドライバーも必要だからだ。数多くあるGTプログラムも続くし、ドライバーたちが余ることはないと考えている」

 ルースは、BMW MチームWRTがWECに6人、BMW MチームRLLがIMSAに4人のドライバーを常駐させることが目標だと説明し、2024年はふたつのシリーズで日程がぶつかる可能性があることを指摘した。Sportcar365は、イモラで開催されるWECのラウンドとロングビーチで開催されるIMSAのイベントが重なる可能性があることを理解している。IMSAのフルスシーズンスケジュールは8月に発表される予定だ。

チームWRTがテストを開始したBMW MハイブリッドV8

■ドライバーの掛け持ち参戦を是とするBMW

「中心的なドライバーはWECかIMSAに参加することになるだろう」と話すルース氏によれば、ほかにもファナテック・GTワールドチャレンジ・シリーズや、IGTCインターコンチネンタルGTチャレンジなど、さまざまなGT3選手権の日程の兼ね合いもあるなかで、ドイツのメーカーそのすべてのプロドライバーのエントリーについてサポートを行うことになるという。

「今のGT3レースのレベルを維持したいのは確かだ。この勢いをキープしたいが、来年はトップにWECがあり、単純計算でもう6人のドライバーが必要になる。この問いに答えるには、来年のカレンダーがすべて揃わなければならない」

「ドライバーたちはひとつの選手権だけに集中しているのではなく、複数の選手権に参戦している。ひとつのレースシリーズやひとつのカテゴリーのマシンでしかドライブできないドライバーを作らないという方向性は正しいと考えていて、これは継続していきたいんだ」

「しかし、これはスケジュールがどの程度ぶつかるか、そしてすべての選手権をどのように組み合わせられるかに懸かっている。さまざまな選手権でレースをこなしている以上、週末にできるレースは限られているからね」

■チームWRTはLMGT3にも興味

 Sportcar365は、チームWRTが2024年からBMWのハイパーカーを走らせる一方でLMGT3にも興味を示しており、BMWの代表として同年に新設されるLMGT3クラスにも参戦する可能性があると指摘する。

 BMW M4 GT3でのLMGT3クラス参戦の可能性について、Sportcar365から質問を受けたチーム代表のヴァンサン・ボッセは次のように答えた。

「13年間にわたってGT3マシンを走らせてきたチームにとって、WECにGT3マシンで参戦するのはもちろん興味がある」

「しかし、それが実現し得るのかは疑問だ。今のところ、ハイパーカープログラムとGT3プログラムは何も関係がないんだ。まったく異なるチームと言っていい」

 ルースは「ふたつのプログラムにシナジー効果はなく、今後もそれぞれを分けておくべきだ」と付け加えている。

「同じレースに参戦する相乗効果は確かに存在するが、マシンを走らせる面ではまったく別々のものだからね」

2023年IGTC第1戦バサースト12時間に参戦したBMW Mチーム WRTの46号車BMW M4 GT3

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