「元刑事の直感」受け子見破る 18歳に「罪償って人生やり直して」

大津署

 大津市で高齢者を狙った特殊詐欺に加担したとして、6月、仙台市の18歳の男が詐欺未遂の疑いで逮捕された。逮捕に貢献したのは、団体役員の中野和浩さん(63)=大津市。滋賀県警の元刑事で、退官前には少年課の少年健全育成室長を務めた。「罪を償ってやり直してほしい」と更生を願っている。

 6月19日、県遊技業協同組合の専務理事を務める中野さんは、大津市内の職場の窓から、住宅街で不審な行動をする若い男を目撃した。男はネクタイが襟からはみ出たまま、リュックサックを背負った格好で住宅街をうろうろしていたという。

 詐欺事件を担当する捜査2課で10年にわたり刑事を務めた経験から、特殊詐欺グループで詐取金などを受け取る「受け子」の特徴に合致すると直感した。追いかけて「どうかなさいましたか」と声をかけたところ、受け答えもぎこちなかったという。巡回中の警察官に伝えると、近くの女性(90)宅を金融機関の職員を装って訪問していたと判明し、逮捕に至った。

 28日、中野さんに大津署から感謝状が贈られた。今年から同署の少年補導員も務めており、男に声をかける際にも、警戒させないよう丁寧な言葉遣いを意識したという。「ここで捕まらなければ、ずっと続けていたかもしれない。反省して人生をやり直してほしい」。若者による特殊詐欺に対しては、「家族や周囲の人がコミュニケーションをとれば防げる。大人がしっかり見ていると伝えたい」と話した。

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