埼玉・武蔵野と兵庫美方地域 世界農業遺産に認定 伝統の営み、人類の宝に

堆肥にする落ち葉を集める住民ら(埼玉県所沢市で)

国連食糧農業機関(FAO)は6日、世界農業遺産に、埼玉県武蔵野地域の「落ち葉堆肥農法」と兵庫県兵庫美方地域の「伝統的但馬牛飼育システム」を新たに認定したと発表した。武蔵野地域は、畑に隣接する林地の落ち葉を堆肥化し、サツマイモを栽培。兵庫美方地域は、日本初の牛の血統登録「牛籍簿」を整備するなど、伝統農法を受け継ぐ。

世界農業遺産は、伝統的な農業技術や土地景観が保全されている地域を認定する。日本の認定地域は、今回を含め14県15地域。

埼玉県川越市や三芳町など4市町からなる武蔵野地域は、平地に植えた落葉樹の落ち葉を堆肥に利用する農法を江戸時代から続ける。林地と畑、屋敷が規則的に並ぶ景観が特徴だ。

兵庫県香美町と新温泉町からなる兵庫美方地域は、県産和牛「但馬牛」で独自の遺伝資源を受け継ぐ。牛の放牧などによる農村環境の保全や、牛ふん堆肥を循環利用する仕組みなどが評価された。

「努力の結果」 埼玉・落ち葉堆肥農法

地元の首長やJA組合長からは喜びの声が上がり、地域で受け継がれてきた伝統農法の保全と継承に向け、意欲を新たにした。

「落ち葉堆肥農法」は、農地と平地林を一体的に活用し、落ち葉を堆肥にサツマイモや野菜を栽培する循環型農業を展開する。川越市と所沢市、ふじみ野市、三芳町の3市1町やJAいるま野など関係団体でつくる「武蔵野の落ち葉堆肥農法世界農業遺産推進協議会」が認定を目指してきた。

認定を受け、同協議会会長を務める林伊佐雄三芳町長は「300年以上続く落ち葉堆肥農法が、世界的に評価され大変うれしい。世代を超えて尽力してきた実践農業者など関係者の努力の結果だ」とコメントした。

継承へ決意新た 兵庫・但馬牛飼育

「伝統的但馬牛飼育システム」は、全国で初めて牛の血統登録「牛籍簿」を整備するなどして、「但馬牛」独自の生産基盤を築き上げた。

「美方郡産但馬牛」世界・日本農業遺産推進協議会の副会長を務めるJAたじまの太田垣哲男組合長は、認定を受け、関係者と連名でコメントを発表。「先人が築き上げてきた美方郡産但馬牛独自の飼育システムが世界的に評価されたもので、関係者の努力なくしては成し得なかった偉業」と強調した。

その上で「伝統的な飼育システムを次世代に継承していくため、保全と活用に重点的に取り組むとともに、国内外に向けて兵庫美方地域の魅力をPRしていく」とした。

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