究極の既得権益

「日本にいる外国人はね、みんなこれ(在留カード)を持っているの。在留資格に『永住者』とあれば就労制限なし。でもクマラ君の場合は自動車整備の仕事だけ。期限が切れたらもう大変よ。スリランカに強制送還」。放映中のNHKドラマ『やさしい猫』では、在日外国人労働者の厳しい現実が描かれる。

▼熟練技能を持つ外国人が無期限に在留できる「特定技能2号」の対象に、飲食料品製造業など9分野が加わった。人手不足に悩む産業界の要請に応えたものだが、働く側に配慮した運用がなされることを願う。

▼「技能・知識の開発途上国等への移転を図り、経済発展を担う人づくりに協力する」なる美辞麗句を掲げる外国人技能実習生制度も、実態は安価な労働力の調達手段。実習生らを人間扱いしない過酷な仕打ちも横行した。廃止が決まり、人材確保を主眼とする新制度となる見通しだ。

▼先月には多くの反対の声が上がるなか、改正入管法が成立した。多数派にとって「究極の既得権益」ともいえる生来の国籍にあぐらをかくあまり、同胞に対してなら決して行わない扱いがまかり通る社会になってはいないか。

© 株式会社食品新聞社