薬効低下や頭痛の原因にも…「水以外で薬を飲むこと」に潜むリスク

効果をきちんと得るためにも薬は水で服用するのが基本(写真:アフロ)

薬は通常「コップ1杯程度の水か白湯で飲む」とされているが、リビングにいて手元にお茶があるときや、外出中や急に具合が悪くなったときなどには、とりあえずそこにある飲み物で薬を服用してしまうこともあるだろう。しかし、安易な飲み方には注意が必要だーー。

「急な体調不良でドラッグストアに駆け込み、市販薬を購入した際、手元に水がなくてお茶やジュースで薬を飲んだ、という経験は多くの人にあることでしょう。でも、一般用医薬品のかぜ薬や痛み止めを、緑茶やコーヒー、エナジードリンクなどで飲むことは避けたほうが無難です。どちらにも『カフェイン』が配合されており、カフェインの過剰摂取から心臓に負担をかけるだけでなく、頭痛や不眠の原因になるためです」

そうアドバイスするのは、『ドラッグストアで買えるあなたに合った薬』(羊土社)の著者で、薬剤師の児島悠史さん。カフェインの過剰摂取は神経系を刺激するため、ほかに不安、めまい、イライラなどを招くことも。

またコーラやジュース、牛乳などで薬を飲むと、薬によってはその効果が弱まったり、逆に強まったりすることもある。たとえば、解熱鎮痛剤の「アスピリン」をコーラや炭酸飲料で飲むと、胃の中のpH値が変わり、薬の効き目が遅くなることがある。あえてそのような飲料を選ぶメリットはないため、水で服用するのがおすすめだ。

持病を抱えていて、病院で処方されている薬がある人の場合は、いっそうの注意が必要となる。夏本番を前に、在宅時も外出中も水分補給をする機会が増えていく。今回は、市販薬、処方薬と飲料の「NG組み合わせ」について児島さんに教えてもらった。

「たとえば、血液をサラサラにする薬『ワルファリン』は、心筋梗塞や脳梗塞など血管系疾患を防ぐ目的で使われます。この薬は『ビタミンK』によって効果が大きく弱められてしまうため、ワルファリンを服用中の人はビタミンKを豊富に含む緑黄色野菜を搾った青汁などを飲むのは控えてください。

また、高血圧や狭心症の治療に用いられる『Ca拮抗薬』のうち、『ニフェジピン』や『ニソルジピン』『フェロジピン』『マニジピン』といった薬は、グレープフルーツジュースと一緒に服用すると、作用が増強するため、めまい・ふらつきといった低血圧の副作用が現れやすくなる恐れがあります」(児島さん、以下同)

熱中症対策でスポーツドリンクを頻繁に飲むという人も多いだろう。スポーツドリンクのなかには糖質が多いタイプの商品もあるが、糖尿病の人がこれを飲むと、血糖値コントロールに影響することがある。糖質が少ないタイプのものを選ぶようにしたい。

「基本的なことですが、糖尿病の人は糖分の多い飲料、高血圧の人は塩分の多い飲料、心不全などで水分量を制限されている人は水の飲みすぎにも注意が必要です」

年齢を重ね、骨を強くしようと、牛乳などカルシウムを豊富に含む飲料を意識的に取る人も多い。しかし、一部の骨粗しょう症の治療薬を使っている人は控えたほうがいいという。

「骨粗しょう症の薬のうち『ビスホスホネート製剤』は、牛乳で飲むと吸収が大きく悪化する恐れがあります。必ず水で服用し、服用後60分間は水以外の水分を取らないようにしなければなりません。また、甲状腺機能低下症の治療に用いられる『レボチロキシン』は、コーヒーの飲用によって吸収が阻害され、病状のコントロールに悪影響を及ぼすことがあります」

お酒で薬を飲むのは厳禁だ。たとえば睡眠薬とアルコールには共通した作用があるため、同時に飲むと薬が過度に効いてしまい、記憶が曖昧になる、呼吸がしづらくなるといったトラブルの原因に。睡眠薬を使っている間は、飲酒はできるだけ控えよう。

手元にある飲み物で飲んでもいいだろう、という安易な判断から副作用で健康を脅かされることのないよう、薬は用量・用法をきちんと守って服用したい。

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