茨城県内 進まぬ被害者支援 条例3市のみ 見舞金支給で差

茨城県

茨城県内市町村で、犯罪被害者などを支援する条例制定が進んでいない。44市町村のうち既に施行しているのは3市、制定検討は2市町にとどまる。自治体間で被害者や遺族への見舞金支給に差が生じており、いばらき犯罪被害者支援センターは「全市町村で制定するのが望ましい」としている。

犯罪被害者等支援条例は、殺人や傷害などの犯罪被害に遭った人や遺族を支援する条例。総合窓口を設置して受けられる支援を案内したり、見舞金を支給したりして、被害の軽減や回復を図る。

同県内の市町村では、常陸大宮市が2010年に初めて条例を制定。市内で08年に起きた殺人事件をきっかけに制定の機運が高まった。

潮来市は13年、グアムで同年2月に同市男性=当時(51)=などが被害に遭った殺傷事件を受けて条例を整備。海外の犯罪被害者に死亡見舞金30万円を支給する全国初の制度(当時)を策定した。このほか、行方市も17年に条例を定めた。

条例制定に向けて現在準備を進めているのは、県央地域の2市町。被害者支援や全国的な動きなどに対応するためで、各担当者が本年度内の成立を目指して条例案を作成したり、検討を重ねたりしている。

県は昨年3月に条例を施行。条例に基づく支援計画を策定したが、見舞金の支給などは国の犯罪被害給付制度の運用にとどまっている状況だ。

同趣旨の条例を巡っては、36人が死亡した19年の京都アニメーション放火殺人事件で、同じ事件の被害者、遺族にも関わらず、受けられる支援に格差が生じる問題が発生。一方、大分県や栃木県では、県条例制定から1、2年の間に全ての市町村で条例が整備されるなど、都道府県レベルでも制定の動きに差が生じている。

警察庁の統計によると、21年度に国の犯罪被害者給付金が支給されるまでに要した期間は、申請から裁定まで平均9.3カ月。

犯罪被害者支援センターの関根俊雄総務室長は、「犯罪被害者や遺族は、治療費や遺体の搬送費などで数十万円が必要となる。居住自治体によって、こうした支援に差があるのは望ましくない。各市町村は見舞金支給を盛り込んだ条例制定を急ぐべき」と強調した。

© 株式会社茨城新聞社