デジタルで食品ロス減へ 栃木県が福田屋と連携、在庫や温度管理を自動化

食品ロス削減実証事業の主な内容

 スーパーやレストランなどで発生する事業系食品ロスの削減に向け、栃木県は本年度、本格的な実証事業を実施する。福田屋百貨店(宇都宮市)と連携し、デジタル技術を活用した事業を今月からスタート。食品の在庫量や仕入れ・品出し量の管理データを「見える化」し、食品ロスを削減する。結果の分析を行い、来年以降、同業他社にも取り組みを広げる方針。県によると、こうした官民連携の実証事業は全国でも珍しいという。

 県内の食品ロス発生推計量(2018年度)は12万4千トンに上り、このうち事業系は7万6千トンで6割を占める。家庭系は4万8千トン。県は21年度に県食品ロス削減推進計画を策定し、30年度までに総発生量を9万9千トンまで減らす目標を掲げている。

 実証事業は7~10月にかけ、四つの対策を実施する。一つ目は、バックヤードに積まれた商品の下に「重量感知マット」を敷き、在庫管理の自動化を図る。在庫量はタブレット端末に通知される仕組みで、発注ミスの防止や業務効率化につなげる。

 次に、自動温度管理センサーの設置。売り場の冷蔵ショーケースに専用センサーを取り付け、庫内の温度管理を自動化し、開け放しや故障時にアラートで知らせる。管理ミスなどによる食品ロスを防止する。

 食品を売り切るために、ビッグデータと天候で食品需要を予測するシステムを活用。主に総菜類で利用し、適正量の仕入れ・品出しを行う。併せて、買い物客には賞味期限の近い商品から購入してもらう「手前取り」も啓発していく。

 実証事業について、同社経営企画室ブランディング推進室の宇賀神徹也(うがじんてつや)室長(51)は「データなどの根拠に基づき、限られた人員の中で作業を効率化できる」と期待を寄せる。

 昨年度は宿泊施設を対象に実証事業を行ったが、本年度は本格的な実証で削減量の数値データを得た上で、11~12月に中小企業診断士が効果を分析する。

 県資源循環推進課は「実証事業により得られた成果は他の食品小売業者にも横展開し、食品ロス削減の機運を醸成していきたい」としている。

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