中庭に突如ねぶたが 宿泊客びっくり 浅虫温泉(青森市)・辰巳館

温泉旅館の中庭に登場した「鬼神羅刹」と、ねぶたを取り囲む宿泊客=5日午後7時40分ごろ、青森市浅虫「辰巳館」

 中庭に突如、本物のねぶたが出現。夕食の後、部屋でくつろいでいた宿泊客の度肝を抜いた。青森ねぶた祭を前に青森市浅虫の旅館「辰巳館」で夜な夜な繰り返される光景だ。

 5日午後7時半過ぎ、旅館の中庭に軽やかなねぶたばやしが響いた。小屋のシャッターが上がり、小ぶりながら、堂々とした面構えのねぶたが姿を現した。台座のまま、レールの上を進み、きりりと引き締まった表情の武者人形が池の水面に浮かぶ。中庭の三方がガラスのために反射して、ねぶたが何台も運行しているように見える。

 ねぶたは、市内で建築会社を営む長尾博さん制作の「鬼神羅刹(きじんらせつ)」。大きさは幅約4.5メートル、奥行き約3.5メートル、高さ約2.5メートル。元々、久栗坂子ども会のねぶたで、昨年、青森工業高校の生徒が紙を張り替えるなど協力した。長尾さんは「震災からの復興に願いを込めた。運行後、面は鬼から神に姿を変え、辰巳館に収めた」と語る。

 赤く燃えるねぶたと軽快な祭りばやしに誘われ、浴衣姿の宿泊客が中庭で、ねぶたを取り囲む。「ラッセラー、ラッセラー」と踊りだす観光客。福島県から団体旅行で訪れた男性客は「まさか、ここでねぶたを見られるとは思わなかった」と上気した表情だ。

 女将(おかみ)の戸嶋マサさんは「20年ほど前から、ねぶたを飾り始め、これが3台目。何もないはずの中庭にねぶたが現れ、お客さまはびっくりする」と笑う。

 辰巳館では好天なら連日、ねぶたが登場。宿泊客は迫力あるねぶたの雄姿を楽しめる。

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