【部活どうなる(6)働き方改革】顧問「強制」残業30時間増 知らぬ競技を教えられない…目つぶってきた問題

部活動を指導する教員の長時間労働が浮き彫りになった実態調査(県教委資料)

 2021年、小学校の教諭が残業代の支給を訴えた訴訟の判決がさいたま地裁であった。教員の残業について、公立の小中学校では教職員給与特別措置法(給特法)が適用され、給与の月額4%相当が上乗せされるが、実労働分の残業代は支給されない。その是非を問うた訴訟で、判決は教諭の請求を退けながらも、教員の労働実態と給特法が「もはや教育現場の実情に適合していないのではないか」と触れた。

 争点は校長の指示があった残業についての判断で、訴訟とは異なるものの、部活動を維持しながら地域に移行させようとする理由の一つに、教員の働き方改革がある。

 部活動の指導は教員の自主的・自発的な活動に位置付けられており、「ただ働き」ともいわれている。

 ある若手教諭は「いろいろな部活をやらされ苦痛だった。自分が知らない競技を教えられるわけがない。生徒との関係も悪くなる」とこぼし、埼玉県内の教育委員会の職員は学校が半ば強制的に部活動の顧問を割り振るケースがあり、「教員から断ることはできない」と打ち明ける。

 訴訟を支援した教育法学が専門の大阪大学人間科学研究科の高橋哲准教授は部活動の指導について、「強制的な部活動については、そもそも給特法の下でも違法となり得ることが見逃されている」と指摘する。

 文科省は教員の労働時間を「在校時間」、残業を「時間外在校時間」と言い換えて働き方改革を進める。県小中学校人事課は、時間外在校時間を月当たり45時間以内に収めるよう市町村教委に働きかけている。

 21年、県は小中学校教員の残業について実態を調査したところ、時間外在校時間は、部活動の顧問を務める教員の時間外在校時間が4週間で70時間2分。顧問を務めない教員の41時間41分より約30時間も長かった。県が取り組む「月当たり45時間以内」の実現に、部活動は大きな壁となっている。

 部活動を指導する教員の負担について高橋准教授は「日本ではスポーツや文化を楽しむ権利が十分に保障されていない。本来、国が金を出して保障しなければいけないものを、教員にただ働きをさせ、学校現場に押し付けてきた」と、これまで教育行政が目をつぶってきた問題を指摘する。

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