社説:熱中症への警戒 声かけあい命を守って

 梅雨明けを待たず、真夏日が相次いでいる。まだ暑さに体が慣れていない今時分は、特に熱中症への警戒が欠かせない。

 「酷暑」化は年々進み、熱中症による死者は年間千人を超え、過去15年で約3倍に増えている。もはや災害級の危険さである。

 水分、塩分の補給や休息に加え、適切な冷房の利用などを励行し、周りと声をかけあって身を守りたい。

 消防庁によると、5月1日~7月2日に熱中症で全国の1万1714人が救急搬送された。7月にかけて大幅に増えつつある。

 うち京都府は294人、滋賀県は123人に上る。4日には栗東市で体育祭中の高校生6人が病院に搬送された。

 気象庁は7~9月の3カ月予報で、西日本は平年より気温が高くなるとしており、いっそう警戒が必要だ。

 熱中症による搬送者の半数超を高齢者が占めている。発生場所は住宅内が約4割と最も多い。炎天下だけでなく、屋内や夜間も油断は禁物である。

 夏本番を前に急増するのは、発汗などで熱を外に逃がす体の働きが十分でなく、熱が体内にこもりやすいのが要因とされる。

 加えて高齢になると暑さやのどの乾きを感じにくく、対処が遅れがちになる。エアコンは室温上昇を抑える切り札であり、一定の節電が呼びかけられている地域でも、命に関わるため我慢せずに活用したい。外出時の日傘や帽子の着用も有効だろう。

 また、幼い子どもは体温調節が未発達で、低い身長やベビーカーは地表の熱を受けやすいため要注意だ。相次いだ通園バス内の置き去り事故の防止策をはじめ、短時間のつもりでも車内に子どもを放置しないよう徹底したい。

 新型コロナウイルス対策の見直しで、マスク着脱は自己判断とされたが、学校や職場、野外で着け続けている人も多い。ほとんど会話のない場合のリスクは小さく、風通しや体調を考えてメリハリをつけたい。

 政府は5月、温暖化による熱中症の深刻化を防ぎ、年間死者数1295人(2018~22年平均)を30年までに半減させる計画を閣議決定した。

 危険度を知らせる「熱中症警戒アラート」に、最上位の特別警戒情報を新設し、市町村は冷房を備えたクーリングシェルター(避難施設)を一般開放する。

 24年から運用予定だが、可能な対策から総動員すべきだ。

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